強盗被告事件において、弁護人なくして開廷し、事件を審理したときは、その審理に立ち会つた他の共同被告人の弁護人が被告人のため有利な弁論をしても、この審理に基く判決は違法である。
強盗被告事件の被告人に弁護人を附けない違法
刑訴法334条,刑訴法410条10号
判旨
必要的弁護事件において、弁護人が選任されているか否か不明な状況下で、弁護人の出頭なく公判を開廷し判決を宣告した手続は、法律に定める弁護人の出頭を欠く重大な違法がある。
問題の所在(論点)
必要的弁護事件において、弁護人選任の有無が不明確なまま、あるいは選任された弁護人を召喚せずに、弁護人の出頭なくして公判を開廷し判決を言い渡すことは、刑事訴訟法上の必要的弁護規定に違反するか。
規範
必要的弁護事件(旧刑事訴訟法334条、現行289条1項)においては、弁護人がなければ開廷することができない。裁判所は、弁護人が選任されていない場合には職権で国選弁護人を付し、選任されている場合には当該弁護人を召喚した上で、弁護人の出頭のもとに審理を行わなければならない。
重要事実
被告人が強盗罪(必要的弁護事件)で起訴された事案において、記録上、被告人と弁護人の連署による弁護人選任届が綴られていたが、事件名が「収賄事件」と表示されていた。原審は、この弁護人が本件の弁護人か否かを確認せず、また職権による国選弁護人の選任も行わないまま、弁護人が出頭しない状態で公判を開廷し、審理を進行させて判決を宣告した。なお、共同被告人の弁護人が被告人のためにも有利な弁論を行った事実はあったが、当該弁護士について被告人の選任届や裁判所の選任決定は存在しなかった。
あてはめ
本件は強盗罪であり、必要的弁護事件に該当する。記録上の弁護人選任届が「他事件の混入」か「事件名の誤記」か不明であっても、前者であれば裁判長は職権で弁護人を付すべきであり、後者であれば選任された弁護人を召喚すべきであった。しかし、原審はいずれの措置も講じず、弁護人の出頭なく開廷している。共同被告人の弁護人が有利な弁論を行ったとしても、正規の選任手続を経ていない以上、被告人の弁護人とは認められない。したがって、弁護人の出頭なく審理を継続した原審の手続には、法律に違反した開廷の違法がある。
結論
原判決を破棄し、本件を大阪高等裁判所に差し戻す。必要的弁護事件において弁護人の出頭を欠いた審理は、絶対的控訴理由(現行379条、411条1号参照)に準ずる重大な手続違反となる。
実務上の射程
憲法37条3項・刑訴法289条1項に基づく弁護人依頼権の重要性を確認する判例である。答案上は、弁護人の出頭を欠いた公判手続の適法性が問われる場面で、手続保障の観点から「必要的弁護事件における開廷の要件」を論じる際の論拠として用いる。
事件番号: 昭和22(れ)331 / 裁判年月日: 昭和23年4月13日 / 結論: 棄却
一 該公判において爲された審理の範圍は上告理由書に書いてある丈けのこと(國籍登録手續をしたかどうか、日本の裁判權に服することに異議はないか、を訊ねたこと)で、犯罪の實體についての審理は何も爲されて居ない。而して第二回の公判においては辯護人立曾の上被告人の人違でないかどうかの點を初めとし、犯罪の實體に付き完全な手續を以て…
事件番号: 昭和23(れ)1480 / 裁判年月日: 昭和24年2月1日 / 結論: 棄却
(國選)辯護人の選任書の原本は辯護人に交付し、その案を記録に編綴して置くのであるから、本件記録に編綴されている前示選任書の案に裁判長の捺印がないのは當然で、それがために選任書の原本に裁判長の捺印がなかつたものと言うことはできないのみならず、同辯護人は右選任によつて右公判期日の延期を求むることなく原審公判に終始異義なく立…
事件番号: 昭和24(れ)590 / 裁判年月日: 昭和24年9月17日 / 結論: 破棄差戻
原審第一回公判調書によれば昭和二三年一二月一〇日に開かれた右公判には辯護人佐藤孝文が立會つた旨の記載がなされている。しかしながら、同辯護人は右公判の前日たる同月九日辯護人を辭任したことは記録上明らかであり同人が更に辯護人に選任されたことは本件においてみとめられない。しかして、本件については原審において別に辯護士林連が同…