(國選)辯護人の選任書の原本は辯護人に交付し、その案を記録に編綴して置くのであるから、本件記録に編綴されている前示選任書の案に裁判長の捺印がないのは當然で、それがために選任書の原本に裁判長の捺印がなかつたものと言うことはできないのみならず、同辯護人は右選任によつて右公判期日の延期を求むることなく原審公判に終始異義なく立會したことも記録上明らかであるから、右選任は有効である。又假りに、所論の如く選任書に裁判長の捺印が缺けていたとしても、かかる瑕疵は右選任の効力を左右するものではない。
記録に編綴されている國選辯護人選任書の案に裁判長の捺印がない場合の選任の効力
舊刑訴法43條
判旨
国選弁護人選任書の案に裁判長の捺印がないとしても、選任の効力は否定されず、弁護人が異議なく公判に立会した以上、手続に違法はない。また、証拠として採用されていない自白に関する証人申請を却下しても、判決に影響を及ぼす違法とはならない。
問題の所在(論点)
裁判長による国選弁護人の選任手続において、選任書の案に捺印がないことが選任の効力および判決に影響を及ぼすか。また、証拠として採用されていない自白の任意性を争うための証人申請を却下することが違法となるか。
規範
裁判所による弁護人選任手続において、記録に編綴された選任書の案に捺印が欠けていたとしても、その事実のみをもって選任が無効となるものではない。また、弁護人が選任に基づき異議なく公判手続に関与している場合には、当該選任は有効に成立しているものと解される。
重要事実
被告人の国選弁護人として選任された弁護士が、原審公判の全過程にわたって異議なく立会い、公判活動を行った。裁判所の記録には選任書の「案」が綴じられていたが、これには裁判長の捺印がなかった。弁護人は、この捺印の欠如を理由として選任の無効を主張し、また、警察段階での拷問等による自白を主張して証人申請を行ったが却下されたことを不服として上告した。
あてはめ
まず、選任書の原本は弁護人に交付される性質のものであり、記録に残る案に捺印がないのは当然である。仮に捺印が欠けていたとしても、当該弁護人が延期を求めることなく終始公判に立会している以上、選任の効力を左右する重大な瑕疵とはいえず、判決への影響も認められない。次に、自白の任意性に関する証人申請については、原判決がそもそも当該自白を証拠として採用していない以上、その申請を却下したとしても刑訴応急措置法12条1項(当時)に違反するものではない。
結論
国選弁護人の選任は有効であり、また証人申請の却下も適法であるため、上告を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟手続における書面上の形式的瑕疵(捺印の欠如等)が、直ちに手続全体の無効を導くものではないことを示す。実務上、弁護人が事実上その職務を遂行し、手続保障が実質的に図られている場合には、形式的瑕疵の治癒や影響の否定を肯定する論拠として活用できる。
事件番号: 昭和23(れ)719 / 裁判年月日: 昭和23年11月9日 / 結論: 破棄差戻
強盗被告事件において、弁護人なくして開廷し、事件を審理したときは、その審理に立ち会つた他の共同被告人の弁護人が被告人のため有利な弁論をしても、この審理に基く判決は違法である。
事件番号: 昭和22(れ)331 / 裁判年月日: 昭和23年4月13日 / 結論: 棄却
一 該公判において爲された審理の範圍は上告理由書に書いてある丈けのこと(國籍登録手續をしたかどうか、日本の裁判權に服することに異議はないか、を訊ねたこと)で、犯罪の實體についての審理は何も爲されて居ない。而して第二回の公判においては辯護人立曾の上被告人の人違でないかどうかの點を初めとし、犯罪の實體に付き完全な手續を以て…