弁護人が被告人の氏名を代書して為した弁護人選任届は法令に違反する瑕疵あるものであるが、右弁護人が異議なく公判に立会い弁論をなし被告人からも何等の異議がなかつたときは右弁護届を無効と断ずることはできない。
弁護人が被告人の氏名を代書してした弁護人選任届の効力
旧刑訴法42条,旧刑訴法74条
判旨
刑事手続における弁護人選任届について、他人が代書した際に必要な代書事由の記載や署名捺印を欠く等の形式上の瑕疵があったとしても、当該弁護士が公判に立ち会い、被告人も異議なく弁論がなされた場合には、当該選任は有効である。
問題の所在(論点)
弁護人選任届に代書事由の記載を欠くなどの形式的瑕疵がある場合、当該弁護人の選任は無効となり、弁護人が立会わない状態で公判が行われたことになるか。
規範
弁護人選任届(刑事訴訟法30条、規則18条等参照)において、代書に関する形式的な手続規定(旧刑訴法74条2項等)に違反する瑕疵がある場合であっても、弁護人及び被告人の双方に選任の意思が実質的に認められ、かつ手続が有効に進行したと認められる特段の事情があるときは、当該選任を直ちに無効とすべきではない。
重要事実
被告人A及びBの弁護人選任届において、各被告人の署名が弁護人Cによる代書であったが、法に定められた「代書した者がその事由を記載して署名捺印する」という附記を欠いていた。しかし、弁護人Cは一貫して原審公判に立ち会い、被告人らも何ら異議を述べることなく公判手続が進められ、弁論が行われた。
あてはめ
本件では、選任届の署名が弁護人による代書であり、法が要求する代書事由の附記がない点で手続上の瑕疵がある。しかし、記録上、弁護人Cは何ら異議なく公判に出頭して弁論を尽くしており、被告人側からも弁護人の活動に対して異議は一切出されていない。このような状況下では、被告人と弁護人の間に有効な選任の合意があり、弁護権の行使が実質的に保障されていたといえるため、形式的瑕疵のみを理由に選任を無効とし、無弁護の違法を認めるべきではないと解される。
結論
弁護人選任届に形式的な瑕疵があっても、被告人及び弁護人に異議なく公判手続が遂行された場合は、選任は無効とはならず、公判手続は適法である。
実務上の射程
弁護人選任という重要な訴訟行為であっても、形式の不備が直ちに無効をもたらすわけではなく、被告人の防御権が実質的に保障されているかという観点から有効性を判断する。実務上は代書の不備を突く上告理由に対する反論として有用である。
事件番号: 昭和23(れ)1480 / 裁判年月日: 昭和24年2月1日 / 結論: 棄却
(國選)辯護人の選任書の原本は辯護人に交付し、その案を記録に編綴して置くのであるから、本件記録に編綴されている前示選任書の案に裁判長の捺印がないのは當然で、それがために選任書の原本に裁判長の捺印がなかつたものと言うことはできないのみならず、同辯護人は右選任によつて右公判期日の延期を求むることなく原審公判に終始異義なく立…