控訴審における弁護人選任届の弁護人の表示が記名であつても、右弁護人が異議なく公判に立会して弁論し、被告人にも異議なかつたことが記録上明らかな場合は、右弁護人選任届は違法ではない(昭和二六年(あ)第二六八号同二八年二月一九日第一小法廷決定、刑集七巻二号二四二頁参照)。
弁護人選任届の弁護人の表示が記名である場合の弁護人選任届は違法か。
刑訴規則18条,刑訴法30条
判旨
弁護人選任届に弁護人の表示が記名でなされている場合であっても、当該弁護人が異議なく公判に立会い、被告人もこれに異議を述べていないときは、当該選任届は適法であり、弁護人選任の効力に欠けるところはない。
問題の所在(論点)
弁護人選任届(刑事訴訟法30条、刑事訴訟規則18条)において、弁護人の表示が署名ではなく記名でなされている場合、その選任の効力および訴訟手続の適法性が認められるか。
規範
弁護人選任届の方式に形式的な不備(記名・押印の不備等)があったとしても、当該弁護人が実際に公判活動を行い、かつ被告人及び訴訟関係人がこれに対して異議なく応じている場合には、手続の安定および被告人の防御権確保の観点から、当該選任届を適法なものとして扱うべきである。
重要事実
本件において、原審弁護人選任届における弁護人の表示が、署名ではなく記名によってなされていた。しかし、当該弁護人は原審の公判期日に異議なく立会い、弁論を実施した。また、被告人本人からも、当該弁護人の選任や訴訟活動について異議の申し立てはなされていなかった。
あてはめ
本件では、選任届に記名があるという形式的事実が存在する。もっとも、記名された弁護人自身が公判に出席して現に弁論を行っており、実質的な弁護活動が担保されている。加えて、訴訟の当事者である被告人がこれに異議を唱えず、黙認・受容している以上、記名であることをもって直ちに選任を無効とし、訴訟手続を違法とする理由はない。したがって、本件の選任届は適法なものとして許容される。
結論
弁護人選任届の記名は適法であり、原審の訴訟手続に法令違反はない。
実務上の射程
本判決は、刑事訴訟における書面の方式不備が直ちに手続の無効をもたらすわけではなく、実質的な防御権の行使状況や追認的な事情を考慮して適法性を判断する立場を示している。答案上は、訴訟手続の瑕疵の有無が問題となる場面で、当事者の異議の有無や実質的権利侵害の有無を検討する際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)2224 / 裁判年月日: 昭和31年4月17日 / 結論: 棄却
控訴審において公判期日を指定告知した後、弁護人から他の裁判所の公判があるため差支があるとの理由により二回にわたつて公判期日の変更申請があり、控訴審は第一回はこれを許したけれども第二回はこれを却下したのであるが、右申請はいずれも刑訴規則第一七九条の四所定の変更事由の疏明資料の添付なく且つ変更事由の継続期間も明らかにしてい…