一 弁護人選任届の被告人または弁護人の表示が記名であつても、右弁護人が異議なく公判に立ち会つて弁論し被告人にも異議がなかつた場合には、該弁護人選任届は無効ではない。 二 地方税法違反について告発を訴訟条件とした旧地方税法一二六条ノ二は、昭和二四年法律一六九号による改正規定で、同法附則により、その前の行為である本件には適用がない。
一 被告人または弁護人の表示が記名である場合の弁護人選任届の効力 二 旧地方税法第一二六条ノ二と控訴条件としての告発
刑訴規則18条,旧地方税法126条の2(昭和24年法律165号による改正),旧地方税法附則4項,憲法39条
判旨
弁護人選任届に形式上の瑕疵があったとしても、当該弁護人が異議なく公判に出頭して弁論を行い、被告人もこれに対して異議を述べなかった場合には、当該弁護人の選任は有効である。
問題の所在(論点)
弁護人選任届に瑕疵がある場合に、弁護人が公判で弁論し被告人が異議を述べなかったときでも、当該弁護人の選任を無効として訴訟手続を違法とすべきか。
規範
刑事訴訟法上の弁護人選任手続において、選任届に形式的な不備や瑕疵が存在する場合であっても、手続の実質的適正と被告人の権利保護の観点から、弁護人が公判に立ち会い異議なく弁論を行い、かつ被告人自身も異議を申し立てなかったときは、その選任を無効とすべきではない。
重要事実
被告人の刑事事件において、原審における弁護人の選任手続に関し、提出された弁護人選任届に瑕疵があった。しかし、当該弁護人は原審の公判期日に出頭し、何ら異議を述べることなく弁論活動に従事した。また、被告人もこの弁護人の活動について公判廷で異議を唱えることはなかった。その後、弁護人選任手続の違法を理由として上告がなされた。
あてはめ
本件では、弁護人選任届に所論のような瑕疵が存在していた。しかし、当該弁護人は公判において異議なく立ち合い、弁論を行っている。これに対し、被告人本人からも異議の申し立てはなされていない。このような状況下では、選任届の形式的瑕疵によって直ちに選任を無効とし、訴訟手続を違法とする必要性は認められない。実質的に弁護権の行使がなされ、被告人の意思にも反しない以上、選任は有効と解される。
結論
弁護人選任届に瑕疵があっても、弁護人が異議なく公判で弁論し被告人も異議を述べなかった場合には、選任は有効であり、訴訟手続に違法はない。
実務上の射程
弁護人選任手続等の訴訟手続に形式的な不備がある場合でも、当事者の実質的な訴訟権利が保障されており、かつ追認的な状況(異議のない弁論)がある場合には、手続の有効性を維持する法理として活用できる。刑事訴訟における「手続の瑕疵の治癒」や「責問権の不行使」に類する判断枠組みとして、実務上参照される。
事件番号: 昭和26(れ)130 / 裁判年月日: 昭和26年6月8日 / 結論: 棄却
弁護人が被告人の氏名を代書して為した弁護人選任届は法令に違反する瑕疵あるものであるが、右弁護人が異議なく公判に立会い弁論をなし被告人からも何等の異議がなかつたときは右弁護届を無効と断ずることはできない。