證據調は、被告人に對する訊問終了後一括して之を爲す必要はなく、審理中、随時之を爲すことを得るものである。そこで、原審において所論診斷書に對する證據調の有無を檢するに、審理の途中である昭和二三年七月一日第二回公判期日において、裁判長は所論の診斷書を被告人等に對し讀み聞かせ、證據調をしていることは明らかである。
事實審理中に證據調をなすことの可否
舊刑訴法338條1項,舊刑訴廢340條
判旨
公判調書における文字の挿入削除が法定の要式を欠く場合であっても、直ちに無効とはならず、当該調書の記載状況や諸般の状況を勘案してその有効性を決すべきである。
問題の所在(論点)
公判調書における文字の挿入・削除につき、法定の方式(認印等)を欠く不備がある場合、その記載の有効性はどのように判断されるべきか。
規範
公判調書における文字の挿入・削除につき、認印等の法定の要式が欠けている場合であっても、当然にその記載が判決の基礎から排除される(無効となる)わけではない。当該公判調書の全体的な体裁、墨色、筆跡、その他の諸般の状況を総合的に勘案し、立会書記官等によって正当になされたものと認められる場合には、その挿入・記載は有効な公判調書の内容を構成する。
重要事実
刑事被告人に対し恐喝未遂等の事実で有罪とした原審の公判調書において、一部に文字の挿入がなされていたが、これに必要とされる認印が欠落していた。弁護人は、当該挿入部分が要式を欠き無効であると主張して上告した。なお、当該挿入部分の墨色や筆跡は、調書全文の他の部分と同一であった。
あてはめ
本件における公判調書の挿入部分を確認すると、その墨色および筆跡は、同調書の全文における他の記載と全く同一であった。この事実から、当該挿入は同一の立会書記官によって正当になされたものであるが、単に認印の押印を遺忘したものと推認できる。したがって、要式の欠如という形式的不備はあるものの、実質的には正当な記載としての真正さが担保されているといえる。
結論
公判調書の挿入部分は有効であり、同調書の正当な内容をなす。したがって、これに依拠した原判決に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
公判調書の正確性が争われる場面(刑事訴訟法48条等に関連する手続違背)において、形式的な不備があっても、書記官による執務の正確性が客観的に担保されていれば有効性が維持されるとする判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)2550 / 裁判年月日: 昭和28年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官等の署名押印に代えて欄外に認印がある公判調書は、刑事訴訟規則46条1項に基づき適法有効なものとして取り扱われる。 第1 事案の概要:被告人3名の弁護人が、公判調書の形式的瑕疵を理由に憲法違反等を主張して上告した。当該公判調書には、本来必要とされる署名押印の代わりに、欄外に裁判長の認印が押され…