原審第一回公判調書及び第三回公判調書に作成書記Aの署名はあるが捺印が缺けているのである。從つて該調書は舊刑訴法第六三條第一項所定の形式に違反すること所論のとおりである。しかし公判調書作成者である書記の捺印を缺く場合に、その公判調書を無効とする法規はないのみならず、立會書記の署名があつてその書記が公判に立會いその調書を作成したことが明らかなときは公判調書を無効とすべき理由はないのである。本件において所論各公判調書には書記Aの署名があるのであつて裁判長の署名捺印もあるのであるから右書記が公判に立會い公判調書を作成したことが明らかであり右各調書を無効とすべきではない。
署名した書記の捺印を缺く公判調書の効力
舊刑訴法63條1項
判旨
公判調書に作成書記の署名はあるが捺印を欠く場合、書記が公判に立ち会い当該調書を作成したことが明らかであれば、その公判調書は無効とはならない。
問題の所在(論点)
公判調書において、作成した裁判所書記官の署名はあるが捺印が欠けているという形式的瑕疵がある場合に、当該公判調書は無効となるか。
規範
公判調書作成者である書記の捺印を欠く場合であっても、公判調書を無効とする明文の規定はない。立会書記の署名があり、その書記が公判に立ち会い当該調書を作成したことが明らかであるときは、署名捺印という形式的な不備があっても、公判調書を無効とすべき理由はないと解する。
重要事実
刑事被告事件の原審(第一回・第三回)公判調書において、作成書記Aの署名はあるものの捺印が欠けていた。一方で、当該調書には裁判長の署名捺印は適正になされていた。弁護人は、旧刑訴法63条1項(現行刑訴法48条3項・刑訴規則44条4項等に相当)所定の形式に違反し、当該調書は無効であると主張して上告した。
あてはめ
本件各公判調書には、書記Aの署名が存在しており、かつ裁判長の署名捺印も具備されている。これらの事実に照らせば、書記Aが実際に公判に立ち会い、その職務として本件公判調書を作成したことは客観的に明らかであるといえる。したがって、捺印の欠如という形式的違法はあるものの、公判調書としての本質的な真正性は担保されており、無効と解すべき事由はない。
結論
本件公判調書は有効であり、これに基づきなされた原判決に違法はない。
実務上の射程
現行刑訴法下においても、公判調書の形式的備え(刑訴法48条、刑訴規則44条)の重要性は維持されているが、本判決は、軽微な形式的不備が直ちに調書の無効を招くわけではないことを示している。実務上は、書記官または裁判官のいずれかの署名捺印が完全に欠落している場合など、作成名義や真正性が疑われる事案との引き直しで、瑕疵の程度を検討する際の指標となる。
事件番号: 昭和27(あ)2550 / 裁判年月日: 昭和28年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官等の署名押印に代えて欄外に認印がある公判調書は、刑事訴訟規則46条1項に基づき適法有効なものとして取り扱われる。 第1 事案の概要:被告人3名の弁護人が、公判調書の形式的瑕疵を理由に憲法違反等を主張して上告した。当該公判調書には、本来必要とされる署名押印の代わりに、欄外に裁判長の認印が押され…