一 公判請求書その作成者たる検察官の所在検察庁の庁印を押さなければならぬとの規定は存在しないのであるから公判請求書にその庁印がなくとも所論のごとく公訴提起の手續が法令に違背するものということはできない(昭和22年(れ)第一四二号同23年二月六日大法廷判決参照)。 二 判決において、刑示訴訟法第三六〇條第二項の判斷を示すには、その判断の基礎となつた證據を判示する必要はないのであるから論旨は理由がない。(昭和二二年(れ)第一五一號、同二三年二月二七日第三小法廷判決参照) 三 犯罪行爲の用に供した物件を沒収するには、それが犯罪行爲の用に供したものであること及び犯人以外の者に屬しないことを判示すれば足りるのであつて、これを認めた證據上の理由を、特に、判決に示す必要はないのであるから、論旨は理由がない。(昭和二三年(れ)第一四七號、同年五月一八日第三小法廷判決参照) 四 執行猶豫を言渡すべき情状があるとの主張は刑事訴訟法第三六〇條第二項の法律上刑の減免の原由たる事實上の主張にあたらない(昭和二二年(れ)第一五五號、同二三年四月一〇日第二小法廷判決参照)
一 公判請求書に検察官の所在検察庁の庁印がない場合と公訴提起の手続の違法 二 舊刑訴法第三六〇條第二項の判斷を示す場合その判斷の基礎となつた證據説示の要否 三 犯罪供用物件を沒収する場合と證據上の理由説示の要否 四 執行猶豫を言渡すべき情状があるとの主張と舊刑訴法第三六〇條第二項の法律条上の減免の原由たる事實上の主張
旧刑訴278條,旧刑訴71條,舊刑訴法360條2項,舊刑訴法360條1項,刑法19條1項2號2項,刑法25條
判旨
公判請求書(起訴状)には作成者である検察官の所属検察庁の庁印を押す規定はないため、庁印の欠如は公訴提起の有効性に影響しない。また、被告人が多数の者の面前で犯行に及び、直後の継続中に逮捕された場合は、現行犯逮捕として適法である。
問題の所在(論点)
1.公判請求書に所属検察庁の庁印がないことは、公訴提起の手続として法令に違反し、無効の原因となるか。2.衆人環視の中での犯行直後に身辺を確保した場合、現行犯逮捕として適法か。
規範
1.公訴提起の手続(公判請求書の方式):公判請求書には作成者である検察官の所属検察庁の庁印を押すべき旨の規定は存在せず、庁印がなくとも公訴提起の手続が法令に違背することはない。2.現行犯逮捕:犯行が衆人環視の中で行われ、かつ犯行直後でその状態が継続している間に身辺を確保された場合は、現行犯逮捕(刑事訴訟法212条1項)の要件を充足する。
重要事実
被告人は、証人Aを含む23名の面前で本件犯行に及んだ。被告人は犯行の直後であり、かつ犯行の状態が継続している最中に身辺を拘束(逮捕)された。その後、検察官が公判請求を行ったが、その請求書には所属検察庁の庁印が押されていなかった。弁護人は、庁印の欠如による公訴提起の違法、および現行犯処分の違法を主張して上告した。
あてはめ
1.公訴提起について、法規上、検察官の署名捺印以外に所属庁の庁印までを要求する規定は存在しない。したがって、庁印の有無によって公訴提起の効力が左右されることはない。2.現行犯逮捕について、第一審の公判調書や証人尋問調書によれば、被告人は多数の者の面前で犯行に及んでおり、犯行の現認は明白である。さらに、逮捕のタイミングも犯行直後かつ状態の継続中であったことから、時間的・場所的接着性が認められ、現行犯としての要件を完全に満たしているといえる。
結論
公判請求書に庁印がなくても公訴提起は適法であり、また本件逮捕は現行犯逮捕として適法であるため、上告を棄却する。
実務上の射程
公訴提起の方式違反に関する主張に対し、形式的な不備(庁印の欠如)が直ちに無効原因にならないことを示す際に参照される。また、現行犯逮捕の要件である「現に罪を行い、又は現に罪を行い終った者」の認定において、第三者の目撃状況や時間的継続性が重要であることを示す実務上の先例となる。
事件番号: 昭和23(れ)1727 / 裁判年月日: 昭和24年4月16日 / 結論: 棄却
原審第一回公判調書及び第三回公判調書に作成書記Aの署名はあるが捺印が缺けているのである。從つて該調書は舊刑訴法第六三條第一項所定の形式に違反すること所論のとおりである。しかし公判調書作成者である書記の捺印を缺く場合に、その公判調書を無効とする法規はないのみならず、立會書記の署名があつてその書記が公判に立會いその調書を作…