裁判所に提出された弁護人選任届に、宛名の記載がなく、且つその日附の部分に、他の部分と異なる筆跡による訂正加入がなされてあつても、無効のものとはいえない。
宛名の記載がなく異つた筆跡による訂正加入のある弁護人選任届の効力
旧刑訴法42条,旧刑訴法73条
判旨
弁護人選任届に宛名の記載がなく、かつ日付の一部に筆跡の異なる訂正や加入がある場合であっても、偽造や変造の確証がない限り、直ちにその選任を無効とすべきではない。
問題の所在(論点)
弁護人選任届に形式上の不備(宛名の欠如、筆跡の異なる訂正・加入)がある場合、当該弁護人の選任は無効となり、弁護人が出廷しないまま行われた公判手続として違法となるか。
規範
弁護人選任届の効力については、書面の形式的な不備(宛名の欠落や筆跡の異なる訂正・加入)が存在したとしても、提出の事実が受付印等により客観的に確認でき、かつ偽造や変造を疑うに足りる具体的な確証がない限り、当該選任は有効である。また、選任された弁護人が実際に被告人とともに出廷し、弁護活動を行っているという実態も、選任の有効性を判断する事情となる。
重要事実
被告人Bと弁護人Mの両名が連署した弁護人選任届が提出されたが、同書面には宛名の記載がなく、かつ日付部分が訂正・加入されており、その筆跡が他の部分と異なっていた。しかし、当該書面には原審の受付印があり、実際に弁護人Mは被告人とともに公判廷に出廷し、弁護人として弁論を行っていた。
あてはめ
本件弁護人選任届は、宛名の記載がないものの、受付印の存在から原審に適切に提出されたことが明らかである。日付の訂正・加入部分の筆跡が異なっているとしても、それが偽造や変造であるとの確証はない。さらに、実態として弁護人Mは被告人とともに公判廷に出頭し、被告人のために種々弁論を行っている。したがって、形式的な不備のみをもって選任を無効とすべき理由はない。
結論
弁護人選任は有効であり、当該選任届を無効として原判決を破棄することはできない。
実務上の射程
刑事手続における書類の形式的瑕疵が、弁護権の行使という実態を覆すほど重大なものかどうかの判断基準として活用できる。特に、偽造の立証がない限り、受付印や実際の出廷状況といった客観的事実に基づき有効性を維持する実務的な傾向を示す。
事件番号: 昭和24(れ)2506 / 裁判年月日: 昭和25年2月16日 / 結論: 棄却
原審における辯護人の選任届に年月日の記載のないことは所論のとおりである。しかし、かかる年月日の記載がないからといつてそれだけでこれを無効とすべき理由はない。そして、原審第一回公判期日に出廷して辯論その他の起訴行爲を爲したAが被告人等の辯護人であつたことは、右の公判調書並びに辯護届によつて明白であるから、原審の審理手續に…