判旨
重罪事件であっても、公判当日に国選弁護人が選任された状況下で、弁護人が異議を述べず弁護活動を尽くしたと認められる場合には、裁判所が職権で期日変更等を行わなくても弁護権の不当な制限にはあたらない。
問題の所在(論点)
公判当日に国選弁護人を選任し、即日結審することが、憲法上の弁護人依頼権を実質的に侵害し、刑事訴訟法上の手続違背(弁護権の不当な制限)となるか。
規範
公判当日の弁護人選任が直ちに弁護権の侵害となるわけではない。裁判所が職権で期日の変更や弁論の続行を行うべきかは、事件の難易、弁護準備に必要な時間、公判における被告人・弁護人の申立ての有無、および実際の弁護活動の状況を総合的に考慮して判断される。
重要事実
重罪事件において、原審は第一回公判期日の当日に被告人のための弁護人を選任し、同日中に審理を行い結審した。公判には弁護人が終始立ち会い、事実審理と証拠調べが行われたが、被告人や弁護人から異議の申立てや期日延期の請求はなされなかった。最終的に弁護人は弁論を行い、審理を終了した。
あてはめ
本件は重罪事件ではあるが、その内容は比較的簡単であった。弁護人は審理に立ち会うことで事件の全貌を把握し、被告人の弁護に欠けるところがないと判断したからこそ、期日の変更を求めず直ちに弁論を行ったと推認される。このように弁護人が特段の異議を述べず有効な弁護活動を遂行したとみなしうる状況下では、裁判所が職権で期日を変更しなかったとしても不当とはいえない。
結論
本件における公判当日の弁護人選任および即日結審は、弁護権を不当に制限したものとはいえず、違法ではない。
実務上の射程
刑事訴訟法における「実質的弁護」の保障の限界を示す。実務上、準備期間の不足を理由に弁護権侵害を主張する場合、期日の延期請求等の手続的対応を怠っていないか、あるいは事案の複雑性から準備不足が明白かという点が重要となる。現代の公判前整理手続下では妥当しにくい側面もあるが、弁護人の訴訟行為の評価という点で参照され得る。
事件番号: 昭和23(れ)1480 / 裁判年月日: 昭和24年2月1日 / 結論: 棄却
(國選)辯護人の選任書の原本は辯護人に交付し、その案を記録に編綴して置くのであるから、本件記録に編綴されている前示選任書の案に裁判長の捺印がないのは當然で、それがために選任書の原本に裁判長の捺印がなかつたものと言うことはできないのみならず、同辯護人は右選任によつて右公判期日の延期を求むることなく原審公判に終始異義なく立…
事件番号: 昭和22(れ)331 / 裁判年月日: 昭和23年4月13日 / 結論: 棄却
一 該公判において爲された審理の範圍は上告理由書に書いてある丈けのこと(國籍登録手續をしたかどうか、日本の裁判權に服することに異議はないか、を訊ねたこと)で、犯罪の實體についての審理は何も爲されて居ない。而して第二回の公判においては辯護人立曾の上被告人の人違でないかどうかの點を初めとし、犯罪の實體に付き完全な手續を以て…