未決勾留は、その名の示すごとく未だ有罪、無罪の決定しない者に對し審理の必要上爲される刑事訴訟手續上の自由の拘束であつてもとより刑罰の執行ではない。從つて、その目的も、拘束の場所も、その處理も、その効果も刑罰の執行と異なるものであるたゞ自由拘束の一點において自由刑の執行と類似するところがあるが故に刑法第二一條は、裁判所に對し諸般の事情參酌してその勾留日數の全部又は一部を本刑に算入することを許容するに過ぎない。そしてその法理は新憲法下においても毫も變更を認めることはできない。もとより無用、不等の未決勾留を許すべきでないこと勿論であるが、さりとて、訴訟の審理上必要な未決勾留日數を常に本刑に通算すべき法律上及び實際上の理由も存しない。
未決勾留日數通算の要否
刑法21條
判旨
未決勾留は刑罰の執行ではなく刑事訴訟手続上の自由の拘束であり、その日数を本刑に算入するか否か、および刑の執行猶予を付すか否かは、裁判所の裁量に委ねられる。
問題の所在(論点)
未決勾留日数を常に本刑に算入すべき法律上の義務があるか、および刑の執行猶予の言渡しが裁判所の任意的事項であるか。
規範
未決勾留は刑事訴訟手続上の自由の拘束であって刑罰の執行ではなく、その目的や処遇等が異なる。そのため、勾留日数を本刑に算入するか否か(刑法21条)は、諸般の事情を参酌して決すべき裁判所の裁量事項である。また、刑の執行猶予を付すか否か(刑法25条)も、諸般の事情を考慮して決すべき任意的事項であり、法律上必然的に行わなければならない性質のものではない。
重要事実
被告人に対し未決勾留がなされた事案において、弁護人が上告理由として、(1)訴訟の審理上必要な未決勾留日数を常に本刑に通算すべきであること、および(2)刑の執行猶予を言い渡すべきであることを主張して争った。
あてはめ
未決勾留は有罪確定前の自由拘束であり、自由刑の執行と類似する側面はあるものの、刑罰そのものではない。したがって、常に本刑に通算すべき法律上・実際上の理由は認められない。また、執行猶予についても、刑法25条の規定に基づき、裁判所が事案ごとの事情を総合的に判断してその適否を決する権限を有しており、義務的な適用を要する法則は存在しない。
結論
未決勾留日数の算入および執行猶予の付与はいずれも裁判所の職権(裁量)に属する事項であり、これらを行わなかった原判決に違法はない。
実務上の射程
未決勾留の法的性質と刑罰との区別を明確にした基本判例である。答案上は、未決勾留日数の算入(刑法21条)や執行猶予(刑法25条)が裁判所の裁量事項であることを根拠づける際に活用できる。また、未決勾留が「刑の執行」ではないことを強調する文脈でも引用可能である。
事件番号: 昭和24(れ)789 / 裁判年月日: 昭和24年7月14日 / 結論: 棄却
所論は、第一審判決が与へられるまでに「身体の不当な拘束を必要以上に延引せられたものである」ことは、違法であると主張するのである。しかしながら上告は原則として第二審判決の法令違反を理由とすべきものであつて、かかる第一審判決手続の違法を理由とすることは法律上許されていない。(所論のような違法があるとすればこれに對しては別の…
事件番号: 昭和62(あ)226 / 裁判年月日: 昭和62年7月16日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】未決勾留期間が別罪の懲役刑等の執行と重複する場合、その期間は刑法21条の未決勾留日数として本刑に算入することはできない。受刑中の身分での勾留は、自由制限の性質が実質的に刑の執行に包含されるため、二重の利益を認めるべきではないからである。 第1 事案の概要:被告人は強盗等の罪で起訴され、第一審・第二…
事件番号: 昭和58(あ)79 / 裁判年月日: 昭和58年11月10日 / 結論: 棄却
原判決中、第一審判決が被告人に対し一二一四日の未決勾留日数のうち四〇〇日を本刑に算入したにすぎない点に裁量の誤りはないとした判断は、いまだ違法とはいえない。