判旨
他の確定判決による刑の執行と、未決勾留状の執行による拘禁が重複している期間については、刑法21条に基づく未決勾留日数の本刑算入を行うことはできない。
問題の所在(論点)
被告人が他の確定判決に基づく刑の執行を受けている期間中、同時に別件(本件)の未決勾留状の執行を受けている場合に、当該重複期間を本刑に算入することが刑法21条に照らし許されるか。
規範
刑の執行と勾留状の執行とが競合(重複)している場合において、当該重複する未決勾留日数を本刑に算入することは、被告人に不当な利益を与えるものであり、刑法21条の適用上許されない。
重要事実
被告人は、住居侵入・窃盗の罪(本件)につき起訴前から勾留されていた。被告人には別の窃盗等の確定判決があり、その刑の執行が開始されていたが、仮出獄が取り消されたことにより、本件の第1審判決後の控訴期間中から控訴審判決までの間、当該別事件の残刑の執行を受けていた。第2審(原審)は、控訴を棄却するとともに、第2審における未決勾留日数30日を本刑に算入する旨を言い渡した。
あてはめ
被告人の本件における第2審(原審)の未決勾留期間は、全て別事件の確定刑の残刑執行期間と重複していた。刑の執行は刑罰の実現そのものであるのに対し、未決勾留日数の算入は、本来は刑の執行ではない勾留による自由制限を実質的に刑の執行の一部とみなす調整措置である。すでに他の刑の執行を受けている期間を本刑に算入すれば、一期間の拘禁をもって二つの刑期を同時に消化させることとなり、被告人に不当な二重の利益を与えることとなる。
結論
被告人の原審における未決勾留の全期間は確定刑の執行と重複しているため、これを本刑に算入した原判決は刑法21条の適用を誤った違法がある。当該算入部分は破棄されるべきである。
事件番号: 昭和62(あ)226 / 裁判年月日: 昭和62年7月16日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】未決勾留期間が別罪の懲役刑等の執行と重複する場合、その期間は刑法21条の未決勾留日数として本刑に算入することはできない。受刑中の身分での勾留は、自由制限の性質が実質的に刑の執行に包含されるため、二重の利益を認めるべきではないからである。 第1 事案の概要:被告人は強盗等の罪で起訴され、第一審・第二…
実務上の射程
本判決は、刑法21条の「未決勾留日数」の算入の限界を示したものである。答案上は、併合罪の処理や勾留の効力を論ずる際、他の刑の執行が先行・重複している場合の算入の可否を判断する枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和32(あ)908 / 裁判年月日: 昭和33年4月10日 / 結論: その他
一 原判決中「本件控訴を棄却する」とある部分に対する上告がその理由なく、「当審における未決勾留日数中百弐拾日を原判決の本刑に算入する」とある部分に対する上告がその理由ある本件においては、原判決中「当審における未決勾留日数中百弐拾日を原判決の本刑に算入する」との部分だけを破棄し、その余の部分に対する上告を棄却すべきもので…
事件番号: 平成23(あ)357 / 裁判年月日: 平成23年7月21日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】未決勾留期間が、確定した別罪の懲役刑等の執行と重複する場合、その期間を本刑に算入することはできない。 第1 事案の概要:被告人は、本件(住居侵入、強盗傷人)の勾留中であった平成22年4月28日、別罪(覚せい剤取締法違反)の懲役1年6月の判決が確定し、同日から刑の執行が開始された。原審(第2審)は、…