一 原判決中「本件控訴を棄却する」とある部分に対する上告がその理由なく、「当審における未決勾留日数中百弐拾日を原判決の本刑に算入する」とある部分に対する上告がその理由ある本件においては、原判決中「当審における未決勾留日数中百弐拾日を原判決の本刑に算入する」との部分だけを破棄し、その余の部分に対する上告を棄却すべきものである 二 原判決が既になされた高等裁判所の判例および原判決後になされた右判例と同趣旨の最高裁判所の判例と相反する判断をしている場合には、刑訴法四〇五条第三号を適用して、原判決を破棄することができる
一 一部破棄の一事例 二 原判決が既になされた高等裁判所の判例および原判決後になされた右判例と同趣旨の最高裁判所の判例と相反する判断をしている場合と刑訴法四〇五条第三号の適用
刑法21条,刑訴法357条,刑訴法410条1項,刑訴法405条2項,刑訴法405条3項
判旨
懲役刑の執行と未決勾留状の執行が競合する場合、一個の拘禁のみが存在すると解すべきであり、重複する未決勾留日数を本刑に算入することは刑法21条の適用を誤る違法なものとなる。
問題の所在(論点)
懲役刑の執行を受けている期間中に、別罪の勾留状が執行され未決勾留の状態が重複した場合、その重複期間を刑法21条に基づき本刑に算入することができるか。
規範
刑の執行と勾留状の執行とが競合している場合には、懲役刑の執行としては一個の拘禁のみが存在するものと解すべきである。したがって、かかる場合に重複する未決勾留日数を本刑に算入することは、被告人に不当な利益を与えることとなり、刑法21条の適用を誤った違法な措置となる。
重要事実
被告人は本件事件で勾留されていたが、並行して別罪の懲役刑(住居侵入・強盗未遂罪)の執行を受けていた。具体的には、前科の仮出獄取消による残刑執行が昭和31年8月31日から開始され、昭和32年6月15日に終了する予定であった。原審は、この刑執行期間と重複する昭和32年3月20日までの未決勾留日数のうち120日を、本件の第一審判決の刑期に算入する旨を言い渡した。
事件番号: 昭和62(あ)226 / 裁判年月日: 昭和62年7月16日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】未決勾留期間が別罪の懲役刑等の執行と重複する場合、その期間は刑法21条の未決勾留日数として本刑に算入することはできない。受刑中の身分での勾留は、自由制限の性質が実質的に刑の執行に包含されるため、二重の利益を認めるべきではないからである。 第1 事案の概要:被告人は強盗等の罪で起訴され、第一審・第二…
あてはめ
本件において、原審が未決勾留日数として算入した120日は、被告人が前示確定刑(別罪の懲役刑)の執行を受けていた期間と完全に重複している。懲役刑の執行を受けている以上、身体の拘束は既に刑の執行として実現されており、これに重ねて未決勾留日数の算入を認めることは、実質的に二重の評価となり被告人に過大な利益を与えることとなる。したがって、本件の算入措置は不当であるといえる。
結論
未決勾留日数の算入に関する原判決部分は破棄されるべきである。懲役刑の執行と重複する未決勾留日数は本刑に算入することはできない。
実務上の射程
刑法21条(未決勾留日数の算入)の限界を示す判例である。答案上は、勾留期間が別罪の既決刑の執行期間と重なる場合に、その期間が「未決勾留」として算入可能かという文脈で、否定的な根拠として引用する。身柄拘束の重複時における算入の可否を論ずる際の基本規範となる。
事件番号: 昭和40(あ)1156 / 裁判年月日: 昭和40年10月22日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】他の確定判決による刑の執行と、未決勾留状の執行による拘禁が重複している期間については、刑法21条に基づく未決勾留日数の本刑算入を行うことはできない。 第1 事案の概要:被告人は、住居侵入・窃盗の罪(本件)につき起訴前から勾留されていた。被告人には別の窃盗等の確定判決があり、その刑の執行が開始されて…
事件番号: 平成23(あ)357 / 裁判年月日: 平成23年7月21日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】未決勾留期間が、確定した別罪の懲役刑等の執行と重複する場合、その期間を本刑に算入することはできない。 第1 事案の概要:被告人は、本件(住居侵入、強盗傷人)の勾留中であった平成22年4月28日、別罪(覚せい剤取締法違反)の懲役1年6月の判決が確定し、同日から刑の執行が開始された。原審(第2審)は、…