判旨
被告人が勾留中に別件の確定刑の執行を受けた場合、勾留状の執行と懲役刑の執行が重複している期間の未決勾留日数を本刑に算入することは、刑法21条の解釈適用を誤ったものであり許されない。
問題の所在(論点)
勾留状の執行による拘禁と、別件の確定判決に基づく自由刑(懲役刑)の執行が重複している場合、その期間の未決勾留日数を刑法21条に基づき本刑に算入することができるか。
規範
刑法21条に基づく未決勾留日数の本刑算入は、身辺の自由が不当に制限されている状態を填補する趣旨である。したがって、勾留状の執行による拘禁と、別件の確定判決に基づく懲役刑の執行による拘禁が重複している場合には、当該期間を未決勾留日数として本刑に算入することはできない。
重要事実
被告人は、本件の起訴前から第一審・第二審を通じて勾留されていたが、これより先に別件の強盗罪等により懲役5年以上10年以下の刑に処せられていた。被告人は仮出獄中であったが、本件の第一審継続中に仮出獄が取り消され、残刑の執行が開始された。その結果、本件の第二審における未決勾留期間は、すべて別件の確定刑の執行期間と重複していた。しかし、原審(第二審)は、この重複期間のうち40日を本件の本刑に算入する旨を言い渡した。
あてはめ
被告人は本件の未決勾留中であった昭和34年2月5日から別件の残刑執行を受けており、第二審における拘禁はすべて別件の刑の執行としての性格を併せ持っていた。未決勾留日数の算入は、刑の執行を受けていない状態での拘束を考慮するものであるが、本件では既に確定した懲役刑の執行という正当な権原に基づく拘束が行われている。したがって、重複する期間について未決勾留としての算入を認めることは、二重に刑期を短縮させることになり、刑法21条の適用範囲を逸脱するものといえる。
結論
未決勾留日数を本刑に算入した原判決の部分は、法令の適用を誤ったものであり破棄を免れない。重複期間の算入は認められない。
実務上の射程
実務上、被告人が勾留中に別件の刑が確定し、あるいは仮出獄が取り消されて既決囚として刑の執行が開始された場合、その後の勾留期間は「未決」としての性質を失い、算入の対象外となる。答案上では、刑法21条の「未決勾留日数」の定義を問う論点として、身分が既決囚に切り替わった後の期間を含めてはならないことを示す際に活用する。
事件番号: 昭和32(あ)908 / 裁判年月日: 昭和33年4月10日 / 結論: その他
一 原判決中「本件控訴を棄却する」とある部分に対する上告がその理由なく、「当審における未決勾留日数中百弐拾日を原判決の本刑に算入する」とある部分に対する上告がその理由ある本件においては、原判決中「当審における未決勾留日数中百弐拾日を原判決の本刑に算入する」との部分だけを破棄し、その余の部分に対する上告を棄却すべきもので…