判旨
未決勾留期間が別罪の懲役刑の執行と重なる場合、その期間は刑の執行としての拘禁のみが存在するものと解され、刑法21条に基づき本刑に算入することは許されない。
問題の所在(論点)
未決勾留期間が、確定した別罪の懲役刑の執行期間と重複する場合、その重複期間を本刑(未決勾留の原因となった罪の刑)に算入することができるか(刑法21条の「未決勾留の日数」の範囲)。
規範
刑法21条に基づく未決勾留日数の算入において、当該日数が別罪の懲役刑の執行期間と重複している場合には、一個の拘禁(刑の執行)のみが存在するものと解すべきである。したがって、このような重複する未決勾留日数を本刑に算入することは、被告人に不当な利益を与えるものであり、同条の適用として許されない。
重要事実
被告人は、第一審で罪1(懲役1年2月)、罪2(懲役8月)、罪3(懲役2月)の判決を受けた。被告人は全部控訴したが、後に罪3の控訴を取り下げ、その刑の執行(昭和36年12月14日から昭和37年1月31日まで)を受けた。この間、被告人は罪2についても勾留を継続されていた。原審は、罪2の控訴を棄却する際、罪3の刑の執行期間と重複する期間を含む70日を、罪2の刑に算入すると言い渡した。
あてはめ
被告人の原審における未決勾留日数のうち、昭和36年12月14日から昭和37年1月31日までの49日間は、罪3の懲役刑の執行と競合していた。この期間は実質的に刑の執行として拘禁されていたといえ、未決勾留として重ねて算入すべき状態にはない。原判決がこの重複期間を含めて70日を算入したことは、刑法21条の解釈を誤り、被告人に不当な利益を与えるものである。算入可能な期間は、控訴申立から刑執行開始前までの期間等(本件では9日)に限られる。
結論
懲役刑の執行と重複する未決勾留日数を本刑に算入することは違法である。原判決を一部破棄し、適法な範囲(9日間)のみを算入する。
実務上の射程
併合罪関係にある複数の事件において、一部の刑が先に確定・執行された場合に、残りの事件の未決勾留期間をどのように計算すべきかという実務上の限界を示す。答案上は、二重の利益(刑の重複評価)を否定する趣旨で、刑法21条の「未決勾留」の意義を限定的に解釈する際に用いる。
事件番号: 昭和58(あ)1059 / 裁判年月日: 昭和58年10月28日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】被告人側による控訴に基づき控訴審が第一審判決を破棄する場合、控訴申立後の未決勾留日数は刑訴法495条2項2号により当然に全部算入される。そのため、裁判所が刑法21条に基づき裁量によりその一部を算入する旨を言い渡すことは、法令適用を誤った違法なものとなる。 第1 事案の概要:被告人は恐喝未遂罪で起訴…
事件番号: 昭和32(あ)908 / 裁判年月日: 昭和33年4月10日 / 結論: その他
一 原判決中「本件控訴を棄却する」とある部分に対する上告がその理由なく、「当審における未決勾留日数中百弐拾日を原判決の本刑に算入する」とある部分に対する上告がその理由ある本件においては、原判決中「当審における未決勾留日数中百弐拾日を原判決の本刑に算入する」との部分だけを破棄し、その余の部分に対する上告を棄却すべきもので…