判旨
被告人が複数の公訴事実で起訴され、その一部について無罪が言い渡された場合であっても、当該無罪部分に係る未決勾留日数を有罪となった本刑に算入することは違法ではない。
問題の所在(論点)
数個の公訴事実により勾留されている被告人に対し、その一部について無罪の言渡しをする場合、当該無罪部分に係る未決勾留日数を、他の有罪となった罪の本刑に算入することができるか(刑法21条の解釈)。
規範
刑法21条に基づく未決勾留日数の算入において、複数の公訴事実のうち一部が判決で無罪とされた場合であっても、当該無罪とされた事実に基づく勾留期間を含めて有罪部分の本刑に算入することは、裁判所の裁量の範囲内として許容される。
重要事実
被告人は複数の公訴事実により起訴され、第一審または控訴審において未決勾留を受けた。原審(控訴審)は、これらの公訴事実のうち一部について無罪を言い渡したが、判決において未決勾留日数のうち60日を有罪となった本刑に算入する旨を言い渡した。これに対し弁護人は、無罪となった公訴事実を理由とする勾留期間を本刑に算入することは違法であり、大審院判例に違反すると主張して上告した。
あてはめ
最高裁判所は、先行する大法廷判決(昭和30年12月26日判決)を引用し、本件における未決勾留日数の算入は違法ではないと判断した。弁護人が主張の根拠とした「無罪部分の勾留は算入できない」とする趣旨の大審院判例は、既に変更されていることを指摘し、原審が一部無罪を言い渡した事案において、その勾留期間を算入した判断に法的な誤りはないと解した。
結論
本件上告を棄却する。一部無罪の場合であっても、その期間中の未決勾留日数を有罪部分の本刑に算入することは違法ではない。
実務上の射程
未決勾留日数の算入(刑法21条)に関する裁判所の広範な裁量を認める判例である。被告人にとって有利な運用を認めるものであり、実務上、一部無罪や訴訟条件欠如等の事情があっても、実質的に同一の手続内で生じた勾留であれば本刑算入の対象となり得ることを示している。
事件番号: 昭和58(あ)1059 / 裁判年月日: 昭和58年10月28日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】被告人側による控訴に基づき控訴審が第一審判決を破棄する場合、控訴申立後の未決勾留日数は刑訴法495条2項2号により当然に全部算入される。そのため、裁判所が刑法21条に基づき裁量によりその一部を算入する旨を言い渡すことは、法令適用を誤った違法なものとなる。 第1 事案の概要:被告人は恐喝未遂罪で起訴…