原判決中未決勾留日数算入部分のみが破棄された事例
刑法21条,刑訴法405条2号,刑訴法410条
判旨
未決勾留期間が別罪の懲役刑等の執行と重複する場合、その期間は刑法21条の未決勾留日数として本刑に算入することはできない。受刑中の身分での勾留は、自由制限の性質が実質的に刑の執行に包含されるため、二重の利益を認めるべきではないからである。
問題の所在(論点)
被告人が別罪の確定判決に基づき刑の執行を受けている期間中になされた本件の未決勾留につき、刑法21条を適用して本刑に算入することができるか。
規範
刑法21条に基づく未決勾留日数の本刑算入は、身柄拘束による自由制限を刑の先取りと評価する制度である。したがって、未決勾留の期間が他の確定判決に基づく刑(懲役刑の残刑等)の執行期間と重複している場合には、当該期間はもっぱら既決刑の執行としての性質を有するため、これを未決勾留日数として算入することは認められない。
重要事実
被告人は強盗等の罪で起訴され、第一審・第二審を通じて勾留されていた。一方で、被告人は過去に無期懲役の判決を受け仮出獄中であったが、本件の第一審係属中に仮出獄を取り消された。その結果、本件の控訴審(原審)における未決勾留の全期間が、前科の無期懲役刑の残刑執行(受刑期間)と時期的に重複する状態となった。それにもかかわらず、原審は未決勾留日数の一部(170日)を本刑に算入する旨を言い渡したため、検察官が上告した。
あてはめ
本件において、被告人に対する原審(控訴審)での未決勾留期間は、全て前科の無期懲役刑に係る残刑執行期間と重複している。未決勾留による自由の制限は、すでに開始されている既決刑の執行によって代替されており、実質的に二重の負担が生じているわけではない。したがって、刑の執行と重複する未決勾留の全期間について、刑法21条を適用して本刑に算入した原判決の判断は、同条の解釈を誤った違法なものであるといえる。
結論
未決勾留の日数が刑の執行と重複する場合には、その日数を本刑に算入することはできない。したがって、原判決中、未決勾留日数を算入した部分は破棄されるべきである。
実務上の射程
量刑上の主張において未決勾留日数の算入を求める際、被告人が別罪で受刑中(あるいは仮出獄取消による残刑執行中)でないかを確認するためのメルクマールとなる。答案上は、刑法21条の適用要件を論じる際に「刑の執行と重複しないこと」という消極的要件として示すべき規範である。
事件番号: 昭和42(あ)1792 / 裁判年月日: 昭和42年12月26日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】未決勾留期間が確定判決に基づく刑の執行期間と重複する場合、その重複期間は刑法21条に基づき本刑に算入することはできない。 第1 事案の概要:被告人は本件勾留中に、以前に犯した詐欺等の罪による懲役刑の仮出獄が取り消された。そのため、本件の勾留継続中でありながら、昭和42年3月3日から同年6月22日ま…
事件番号: 昭和32(あ)908 / 裁判年月日: 昭和33年4月10日 / 結論: その他
一 原判決中「本件控訴を棄却する」とある部分に対する上告がその理由なく、「当審における未決勾留日数中百弐拾日を原判決の本刑に算入する」とある部分に対する上告がその理由ある本件においては、原判決中「当審における未決勾留日数中百弐拾日を原判決の本刑に算入する」との部分だけを破棄し、その余の部分に対する上告を棄却すべきもので…