懲役刑の執行と競合する未決勾留日数を本刑に算入した原判決が判例違反で破棄された事例
刑法21条
判旨
懲役刑の執行を受けている期間と未決勾留の期間が重なる場合、その競合期間を刑法21条に基づき本刑に算入することは、二重の刑執行を認めることになり許されない。
問題の所在(論点)
別罪の懲役刑の執行と、本件被告事件の勾留状による未決勾留とが競合している場合、その競合期間を刑法21条により本刑に算入することができるか(刑法21条の「未決勾留の日数」の範囲)。
規範
刑法21条に基づく未決勾留日数の本刑算入は、未決勾留が実質的に刑の執行と同様の身体拘束を伴うことに鑑みた調整規定である。したがって、被告人が既に確定した別罪の刑(懲役刑等)の執行を受けている期間と、本件の未決勾留の期間が競合している場合、その競合期間については刑法21条の適用対象とはならず、算入することは許されない。
重要事実
被告人は、昭和55年6月に本件窃盗の事実で勾留された。一方で、被告人は別罪について執行猶予が取り消されたことにより、同年12月10日から翌56年10月13日まで、別罪の残刑につき受刑中であった。原審は、この受刑期間と本件の勾留期間が競合しているにもかかわらず、本件の未決勾留日数のうち240日を本刑に算入する判決を言い渡したため、検察官が上告した。
あてはめ
本件において、被告人が別罪の残刑を執行されていた昭和55年12月10日から昭和56年10月13日までの期間は、受刑という身体拘束が先行している。この期間は本件の勾留状による拘束と競合しているが、既になされている刑の執行と重複して未決勾留日数を算入することはできない。したがって、原審における未決勾留日数のうち算入が許されるのは、残刑執行終了の翌日(昭和56年10月14日)から原判決言渡前日(同月27日)までの14日間に限られる。
結論
懲役刑の執行と競合する未決勾留日数を刑法21条により算入することは違法である。原判決のうち、14日を超えて未決勾留日数を算入した部分は破棄を免れない。
実務上の射程
実務上、未決勾留日数の算入を検討する際は、被告人の前科や別罪による受刑状況を精査する必要がある。特に、仮出獄の取消しや執行猶予の取消しによって別罪の執行が開始された場合、その期間は本件の未決勾留日数から除外すべきことが、本判決および引用される大法廷判決(昭和32年)により確立している。答案作成上は、算入の可否が問われた際に、身体拘束の性質(既決か未決か)を区別する根拠として用いる。
事件番号: 昭和47(あ)2022 / 裁判年月日: 昭和48年3月30日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】未決勾留期間が別個の確定判決に基づく刑の執行期間と重複する場合、その重複期間については刑法21条に基づく本刑への算入は認められない。 第1 事案の概要:被告人は窃盗未遂罪で勾留中であったが、その期間内に別罪の仮出獄が取り消され、昭和47年5月25日から同年9月3日まで残刑の執行を受けた。第一審判決…
事件番号: 昭和62(あ)226 / 裁判年月日: 昭和62年7月16日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】未決勾留期間が別罪の懲役刑等の執行と重複する場合、その期間は刑法21条の未決勾留日数として本刑に算入することはできない。受刑中の身分での勾留は、自由制限の性質が実質的に刑の執行に包含されるため、二重の利益を認めるべきではないからである。 第1 事案の概要:被告人は強盗等の罪で起訴され、第一審・第二…