判旨
懲役刑等の執行と未決勾留が競合する場合、その競合期間中の未決勾留日数を刑法21条に基づき本刑に算入することはできない。したがって、本刑に算入できる未決勾留日数は、刑の執行が開始される前日までの期間に限られる。
問題の所在(論点)
懲役刑の執行と未決勾留が競合している場合、その期間を刑法21条に基づき本刑に算入することが許されるか(刑法21条の「未決勾留の日数」の範囲)。
規範
刑法21条による未決勾留日数の本刑算入は、身分拘束の二重評価を避ける観点から、他の懲役刑等の執行と競合する期間については認められない。算入の対象となるのは、実質的に未決勾留としての性質のみを有する期間に限定される。
重要事実
被告人は窃盗罪(本件)により勾留中であったが、別件の執行猶予が取り消され、仮出獄も取り消された。昭和43年7月3日から別件の残刑執行(懲役刑)が開始されたが、原審は同日以降の期間を含む未決勾留日数50日を本件の本刑に算入した。本件の控訴申立日は同年6月24日であった。
あてはめ
被告人に対し別件の残刑執行が開始された昭和43年7月3日以降は、本件の未決勾留と別件の刑の執行が競合している。この競合期間は、既に刑の執行としての実質を有しているため、重ねて本刑に算入することは刑法21条の解釈として違法である。よって、本刑に算入できるのは、控訴申立日である6月24日から残刑執行開始前日の7月2日までの9日間に限られる。
結論
懲役刑の執行と競合する未決勾留日数を本刑に算入することは違法である。原判決のうち9日を超える算入部分は破棄を免れない。
実務上の射程
本判決は、刑法21条の「未決勾留日数」の算入範囲を画定する実務上極めて重要な規範である。答案作成においては、勾留期間中に別件の刑執行(服役)が開始された事実がある場合、その始点を確認し、競合期間を算入対象から除外する論理構成を導く際に用いる。
事件番号: 昭和59(あ)189 / 裁判年月日: 昭和59年7月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】懲役刑の執行と競合する未決勾留日数を刑法21条により本刑に算入することは違法であり、仮出獄の取消しに伴う残刑執行期間中の勾留日数は算入の対象外となる。 第1 事案の概要:被告人は窃盗罪等で懲役3年に処され、仮出獄中の昭和58年4月に別件窃盗で勾留された。同年5月27日に前科の仮出獄が取り消され、同…