未決誤算入部分を破棄する場合における主文の表示方法(反対意見がある)
刑法21条,刑訴法396条,刑訴法410条,刑訴法414条
判旨
懲役刑の執行と競合する未決勾留日数は、刑法21条に基づき本刑に算入することはできない。未決勾留日数の算入が許される限度は、他罪の刑の執行が終了した日の翌日から判決言渡の前日までの期間に限られる。
問題の所在(論点)
被告人が別罪の懲役刑の執行を受けている期間(受刑期間)と、本件の未決勾留期間が重複している場合、刑法21条により当該重複期間を本刑に算入することができるか。
規範
刑法21条に基づく未決勾留日数の本刑算入について、既に確定した別罪の懲役刑の執行を受けている期間と未決勾留の期間が重複する場合、当該重複期間を本刑に算入することは許されない。算入の対象となるのは、他罪の刑の執行(残刑の執行等)を受けていない実質的な未決状態の期間に限られる。
重要事実
被告人は窃盗罪等で第一審・第二審を通じて勾留されていたが、その勾留期間中に、別罪(住居侵入、詐欺等)による懲役刑の仮出獄が取り消された。被告人は昭和58年8月7日から同年11月8日まで、当該別罪の残刑について刑の執行を受けていた。原審は、第二審の判決において、当審における未決勾留日数中60日を本刑に算入すると判示した。
あてはめ
被告人は昭和58年8月7日から同年11月8日まで別罪の残刑執行中であり、この期間は懲役刑の執行と未決勾留が競合している。最高裁の判例によれば、このような競合期間を算入することは違法である。したがって、本件で算入が許される未決勾留日数の限度は、残刑執行が終了した日の翌日(11月9日)から、原判決言渡の前日(12月12日)までの34日間に限定される。原審がこれを超えて60日を算入した判断は、刑法21条の解釈を誤ったものであるといえる。
結論
懲役刑の執行と競合する未決勾留日数を本刑に算入することはできない。原判決のうち算入に関する部分を破棄し、適正な日数である34日のみを算入する。
実務上の射程
刑法21条の「未決勾留日数」の算入範囲を画定する射程を持つ。被告人が余罪で服役中の場合に、本件の勾留期間を二重に刑期から差し引くことを否定する実務上の運用を支える判例である。答案上は、未決勾留日数の算入の適法性が争われる際の計算根拠として、他罪の既決刑執行との関係を整理するために用いる。
事件番号: 昭和59(あ)189 / 裁判年月日: 昭和59年7月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】懲役刑の執行と競合する未決勾留日数を刑法21条により本刑に算入することは違法であり、仮出獄の取消しに伴う残刑執行期間中の勾留日数は算入の対象外となる。 第1 事案の概要:被告人は窃盗罪等で懲役3年に処され、仮出獄中の昭和58年4月に別件窃盗で勾留された。同年5月27日に前科の仮出獄が取り消され、同…