判旨
他の確定判決に基づく刑の執行を受けている期間と重複する未決勾留日数は、刑法21条の「未決勾留の日数」として本刑に算入することはできない。
問題の所在(論点)
刑の執行を受けていた期間と重複する未決勾留日数を、刑法21条により本刑に算入することができるか(刑法21条の適用範囲)。
規範
刑法21条に基づき判決で本刑に算入することができる未決勾留日数は、純粋に身体の自由を拘束されていた期間に限られる。既に他の確定判決に基づき刑の執行を受けている期間は、形式的に勾留状の執行が重複していたとしても、実質的には既判力に基づく刑の執行という性質を有するため、これをさらに本刑に算入することは被告人に不当な利益を与えることとなり、許されない。
重要事実
被告人は本件の起訴前から第一審・原審を通じて勾留されていたが、その期間中に別件の窃盗罪による懲役刑の仮出獄が取り消され、昭和37年5月14日から同年10月4日まで残刑の執行を受けた。原審は、被告人に対し控訴棄却の判決を言い渡す際、第二審における未決勾留日数のうち50日を本刑に算入する旨を宣示したが、この期間には上記別件の刑の執行期間が一部含まれていた。
あてはめ
被告人が別件の残刑執行を受けていた期間(昭和37年5月14日から10月4日まで)は、本件の勾留状の執行と確定刑の執行が重複していた。原審が算入を命じた「第二審における未決勾留日数50日」は、この刑の執行期間と重複している。このように他の刑の執行が先行している期間を未決勾留として算入することは、同一の拘禁期間を二重に評価することになり、被告人に対して不当な利益を与える結果を招く。
結論
刑の執行と重複する未決勾留日数を本刑に算入した原判決には刑法21条の適用誤りがある。したがって、原判決のうち未決勾留日数を算入した部分は破棄を免れない。
実務上の射程
本判決は、刑法21条の「未決勾留」の意義について、他の刑の執行がある場合にはその実質的な拘禁の性質を重視する立場を明確にしたものである。実務上、被告人に余罪がある場合の既決期間と未決期間の重複については、本判例を根拠に重複算入が否定されるため、起訴状や既決の経歴を確認し、算入の可否を厳格に判断する際の基準として用いる。
事件番号: 昭和43(あ)2206 / 裁判年月日: 昭和44年2月28日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】未決勾留が他の確定判決による刑の執行と重複する場合、その重複期間中の未決勾留日数を本刑に算入することは、刑法21条の適用上許されない。 第1 事案の概要:被告人は本件勾留中の昭和43年5月16日から、別件の窃盗罪による懲役刑の残刑執行を受け、同年8月18日にその執行を終了した。その後、同年9月5日…