被告人が勾留請求の直前の約六ヶ月間に都内の簡易旅館等を数回転々しており、右請求当時も簡易宿泊所に住居していた等の事情があるときは、刑訴法第六〇条第一項第一号にいう「被告人が定まつた住居を有しなかつた」にあたる。
刑訴法第六〇条第一項第一号にいう「定まつた住居を有しないとき」にあたるとされた事例。
刑訴法60条1項1号
判旨
懲役刑等の執行と重複する未決勾留日数を本刑に算入することは、被告人に不当な利益を与えるものであり、刑法21条の適用を誤った違法なものとして許されない。
問題の所在(論点)
未決勾留期間が他の確定した懲役刑の執行期間と重複している場合、刑法21条に基づき、その重複期間を本刑に算入することができるか。
規範
刑法21条に基づく未決勾留日数の本刑算入において、当該未決勾留の期間が他の確定判決に基づく懲役刑等の執行期間と重複している場合には、これを本刑に算入することはできない。その趣旨は、刑の執行を受けている期間を重ねて未決勾留として評価することは、被告人に不当な利益を与える結果となるためである。
重要事実
被告人は窃盗罪で起訴され勾留中であったが、別件の窃盗罪で懲役1年の確定判決を受け、その刑の執行が開始された。本件の控訴審(原審)の期間は、この別件確定刑の執行期間と完全に重複していた。しかし、原審は未決勾留日数中の80日を本件の刑期に算入する旨を言い渡したため、検察官が判例違反を理由に上告した。
あてはめ
被告人は別件の確定刑により昭和37年7月26日から昭和38年7月10日まで刑の執行を受ける地位にあり、原審における未決勾留の全期間はこの執行期間と重複していた。本来、刑の執行により身体の自由が拘束されている期間は、未決勾留としての性質を実質的に持たない。このような重複期間をさらに本刑に算入することは、実質的に二重に期間を差し引くことになり、被告人に不当な利益を与えるといえる。
結論
懲役刑の執行と重複する未決勾留日数を本刑に算入することは違法である。したがって、算入を認めた原判決の当該部分は破棄を免れない。
実務上の射程
実務上、被告人が別件で受刑中の場合に生じる「余罪の勾留」の期間を、当該余罪の刑期から差し引くことはできないとする射程を持つ。刑法21条の解釈において「実質的に自由を奪われた期間」の重複評価を否定する重要な基準である。
事件番号: 昭和38(あ)657 / 裁判年月日: 昭和38年7月30日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】懲役刑の執行と重複する未決勾留日数を本刑に算入することは、被告人に不当な利益を与えるものであり、刑法21条の適用を誤った違法なものとして許されない。 第1 事案の概要:被告人は窃盗罪で起訴され勾留中であったが、それ以前に別罪(恐喝未遂罪)で懲役10月の確定判決を受けていた。被告人は本件の控訴審(原…