判旨
懲役刑の執行と重複する未決勾留日数を本刑に算入することは、被告人に不当な利益を与えるものであり、刑法21条の適用を誤った違法なものとして許されない。
問題の所在(論点)
刑法21条の「未決勾留の日数」として本刑に算入できる範囲について。特に、既に確定している別罪の懲役刑の執行期間と重複する未決勾留日数を、本刑に算入することの可否が問題となる。
規範
刑法21条に基づく未決勾留日数の本刑算入は、未決勾留が刑の執行と実質的に重なる期間について行われるべきものである。したがって、別罪の確定判決に基づく懲役刑の執行と重複する未決勾留日数を、当該事件の本刑に算入することは認められない。
重要事実
被告人は窃盗罪で起訴され勾留中であったが、それ以前に別罪(恐喝未遂罪)で懲役10月の確定判決を受けていた。被告人は本件の控訴審(原審)継続中に、別罪の確定刑の執行を受け始め、刑期満了前に原審の判決が言い渡された。原審は、この刑執行期間と重なっている原審での未決勾留日数のうち90日を、本件の本刑に算入する旨を言い渡した。これに対し検察官が、刑の執行と重複する期間の算入は違法であるとして上告した。
あてはめ
被告人は昭和37年10月10日から別罪の確定刑の執行を受けており、その刑期は昭和38年6月30日に満了する予定であった。原審における未決勾留の全期間は、この確定刑の執行期間と完全に重複していたといえる。このように、身体拘束がすでに既決囚としての刑の執行という性質を有している期間を、さらに未決勾留として本刑から差し引くことは、二重に利益を与える結果となり不当である。したがって、本件において算入された90日は、刑法21条の適用を誤ったものと解される。
結論
懲役刑の執行と重複する未決勾留日数を本刑に算入することは違法であり、原判決のうち算入を認めた部分は破棄されるべきである。
実務上の射程
実務上、被告人が別件で受刑中の場合に、本件の未決勾留日数が算入されるかどうかの判断基準となる。既決刑の執行(受刑)は自由剥奪を伴う刑罰の実現であるため、未決状態での不利益を補填する21条の趣旨は及ばない。答案上は、算入の可否を論じる際の消極的要件として活用する。
事件番号: 昭和38(あ)2173 / 裁判年月日: 昭和38年12月24日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】別件の刑の執行と重複する未決勾留日数を本刑に算入することは、刑法21条の適用を誤ったものであり、被告人に不当な利益を与えるため許されない。 第1 事案の概要:被告人は窃盗罪(本件)で勾留中、第一審の有罪判決に対し控訴した。控訴審の係属中、被告人は別件の窃盗罪により懲役3月の確定判決を受け、その刑の…