判旨
他の確定刑の執行を受けている期間は、形式的に未決勾留状が執行されていても、その期間の実態は刑の執行である。したがって、刑の執行と重複する未決勾留日数を本刑に算入することは、刑法21条の適用を誤った違法な措置である。
問題の所在(論点)
他の確定刑の執行(残刑執行)を受けている期間と重複する未決勾留の日数を、本刑に算入することができるか(刑法21条の適用範囲)。
規範
刑法21条に基づく未決勾留日数の本刑算入は、未決の身体拘束という実態を考慮してなされるべきものである。他の確定判決に基づく刑の執行を受けている期間については、たとえ未決勾留状が重複して執行されていたとしても、その実態は確定刑の執行であり、これをさらに本刑に算入することは、被告人に不当な利益を与えることとなり許されない。
重要事実
被告人は窃盗罪による懲役1年の確定刑に基づき仮出獄中であったが、仮出獄の取消しにより、昭和37年3月26日から同年8月7日まで残刑の執行を受けていた。一方で、本件被告事件について同年2月8日から勾留状の執行を受け、控訴提起後も勾留が継続されていた。原審は、控訴棄却の判決において、第二審における未決勾留日数中80日を本刑に算入すると判断した。
あてはめ
被告人は、昭和37年3月26日から8月7日までの間、前科の残刑の執行を受けて服役していた。この期間は、本件の未決勾留と確定刑の執行が重複している状態にある。このような刑の執行期間と重なる未決勾留日数を本刑に算入することは、自由刑の執行を受けながら同時にその期間を別件の刑期から差し引くことを意味し、被告人に不当な二重の利益を与える結果となる。ゆえに、本件における算入措置は刑法21条の解釈を誤ったものである。
結論
確定刑の執行と重複する未決勾留日数を本刑に算入することは違法であるため、原判決のうち算入に関する部分を破棄する。
実務上の射程
本判決は、刑法21条の「未決勾留日数」の算入対象から、他の確定刑の執行を受けていた期間を明確に除外する。司法試験の刑事法実務や刑法において、未決勾留の算入が問題となる事案(特に余罪の勾留や別件での服役が並行する場合)で、身体拘束の実態を正確に把握するための判断基準として活用される。
事件番号: 昭和37(あ)1207 / 裁判年月日: 昭和37年10月5日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】他の確定判決に基づく刑の執行を受けている期間は、たとえ当該事件について勾留状が執行され未決勾留の状態にあったとしても、その日数を本刑に算入することはできない。 第1 事案の概要:被告人は強盗殺人罪により懲役5年以上8年以下の刑に処せられ、仮出獄中に本件窃盗事件を起こした。本件について勾留中の昭和3…