懲役刑の執行と競合する未決勾留日数を本刑に算入した原判決が破棄された事例
刑法21条
判旨
懲役刑等の刑の執行と、別件における未決勾留とが期間的に競合する場合、当該競合する未決勾留日数を刑法21条により本刑に算入することはできない。
問題の所在(論点)
未決勾留と別件の刑の執行が重複している場合、その重複期間を刑法21条に基づき本刑に算入することができるか(未決勾留の算入制限の有無)。
規範
刑法21条に基づく未決勾留日数の算入は、身分拘束が未決勾留のみに基づいている場合に認められるものである。したがって、既に確定した別件の懲役刑等の執行と未決勾留とが期間的に競合している場合、その期間については刑の執行が行われている以上、未決勾留日数を本刑に算入することは法令上許されない。
重要事実
被告人は、本件での勾留中(一審懲役1年、控訴中)に、別件の窃盗罪(懲役1年6月)に係る仮出獄の取消決定を受けた。これにより、昭和50年9月8日から別件の残刑執行が開始されたが、本件の控訴審判決は、この残刑執行開始日以降の期間(競合期間)を含む未決勾留日数60日を本件の刑に算入した。
あてはめ
被告人は昭和50年9月8日から別件の残刑執行が開始されており、同日以降は受刑中の身分であった。未決勾留と刑の執行が競合している場合、その期間は刑の執行が優先されるため、算入可能な範囲は、控訴申立日(7月31日)から残刑執行開始日の前日(9月7日)までの39日間に限定される。原判決がこれを上回る60日間を算入した点は、法令の適用を誤ったものである。
結論
懲役刑の執行と競合する未決勾留日数は本刑に算入できず、算入日数は残刑執行開始前日までの期間に限定される。
実務上の射程
本判決は、未決勾留の「二重算入」を防止する趣旨であり、実務上、被告人が勾留中に別件の刑期が開始された(または既決監へ移送された)場合の算入日数の限界を示す。司法試験では、刑法21条の「未決勾留日数」の解釈として、身体拘束の重複時における算入の可否を判断する際の規範となる。
事件番号: 昭和36(あ)2490 / 裁判年月日: 昭和37年6月29日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】未決勾留の日数が別罪の確定刑の執行期間と重複している場合、その重複期間を本刑に算入することは、被告人に不当な利益を与えるものであり、刑法21条の適用を誤った違法なものとなる。 第1 事案の概要:被告人は本件窃盗事件で勾留されていたが、その勾留期間中に、別罪(別の窃盗事件や罰金刑に代わる労役場留置等…