判旨
未決勾留期間が確定判決に基づく刑の執行期間と重複する場合、その重複期間は刑法21条に基づき本刑に算入することはできない。
問題の所在(論点)
被告人が他の確定判決に基づき刑の執行を受けている期間と、本件被告事件における未決勾留期間が重複する場合、当該重複期間を刑法21条に基づき本刑に算入することができるか。
規範
刑法21条にいう「未決勾留」とは、判決確定前の身分的な拘束を指すが、被告人が他の確定刑の執行を受けている期間は、実質的に既決囚としての刑の執行を受けている状態にある。したがって、他の罪による確定刑の執行期間と、本件の未決勾留期間が重複する場合、その重複部分は本刑に算入すべき「未決勾留日数」には含まれない。
重要事実
被告人は本件勾留中に、以前に犯した詐欺等の罪による懲役刑の仮出獄が取り消された。そのため、本件の勾留継続中でありながら、昭和42年3月3日から同年6月22日まで、仮出獄取消による残刑の執行を受けた。原審(二審)は、控訴棄却判決において、原審における未決勾留日数のうち60日を本刑に算入したが、この算入された日数の中には、上記の残刑執行期間と重複する期間が含まれていた。
あてはめ
被告人は昭和42年3月3日から同年6月22日まで確定刑の執行を受けており、この期間は法的に既決囚として服役している。これに対し、原審が本刑に算入した「未決勾留日数中60日」のうち、残刑執行満了日の翌日から判決言渡前日までの13日間を除く部分は、確定刑の執行期間と重複している。このように他の刑の執行が優先して行われている期間は、未決勾留としての性質を失うため、刑法21条を適用して本刑に算入することは違法であると解される。
結論
未決勾留日数を本刑に算入するにあたり、他の確定刑の執行期間と重複する部分は算入できない。本件では、残刑執行期間と重複しない13日間を除く部分は算入を認めず、原判決の算入部分を破棄する。
実務上の射程
本判決は、刑法21条の「未決勾留日数」の範囲を確定刑の執行との関係で画定したものである。答案上は、複数の事件で身分拘束を受けている被告人の刑期計算において、既決刑の執行と未決勾留が競合した際に、二重に刑期を減軽(算入)することは許されないという文脈で使用する。
事件番号: 昭和62(あ)226 / 裁判年月日: 昭和62年7月16日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】未決勾留期間が別罪の懲役刑等の執行と重複する場合、その期間は刑法21条の未決勾留日数として本刑に算入することはできない。受刑中の身分での勾留は、自由制限の性質が実質的に刑の執行に包含されるため、二重の利益を認めるべきではないからである。 第1 事案の概要:被告人は強盗等の罪で起訴され、第一審・第二…