判旨
被告人が未決勾留を受けている期間中に、別の確定判決に基づく刑の執行を受けている場合、その重複する期間を刑法21条に基づき本刑に算入することはできない。
問題の所在(論点)
被告人が未決勾留を受けている期間が、別の確定判決に基づく刑の執行期間と重複している場合に、刑法21条を適用して未決勾留日数を本刑に算入することができるか。
規範
刑法21条に基づく未決勾留日数の本刑算入は、刑の執行を受けていない状態での身体拘束を考慮するものである。したがって、未決勾留の期間が他の確定判決に基づく刑の執行期間と重複する場合には、同条を適用して当該期間を本刑に算入することは許されない。
重要事実
被告人は窃盗罪により起訴され、一、二審を通じて勾留されていた。しかし、被告人はこれより前に強盗罪による懲役刑(懲役3年以上5年以下)の判決を受けて確定しており、仮出獄の取消しを経て、本件の控訴審継続中に当該前科の残刑執行が開始されていた。原審は、被告人に対し控訴棄却の判決を言い渡すとともに、原審における未決勾留日数のうち90日を本刑に算入した。
あてはめ
被告人に対する原審の未決勾留の全期間は、前科である強盗罪の確定判決による残刑の執行期間と重複している。刑法21条は、本来自由な身であるべき者が未決のまま拘束されたことに対する調整規定であるところ、既に他の刑の執行を受けている期間については、二重の評価となるため算入の対象とはならない。したがって、原審が未決勾留日数を本刑に算入した判断は、刑法21条の解釈を誤った違法があるといえる。
結論
未決勾留期間が刑の執行と重複する場合は本刑に算入できない。原判決のうち未決勾留日数を算入した部分は破棄される。
実務上の射程
本判決は、刑法21条の「未決勾留日数」の範囲を画するものである。実務上、併合罪の関係にない別罪の刑期との重複がある場合、算入が否定される根拠として機能する。答案上は、余罪での勾留と本罪の刑期、あるいは本罪の勾留と別罪の確定刑の執行が重なる場面で、算入の可否を論ずる際の規範として活用できる。
事件番号: 昭和45(あ)2255 / 裁判年月日: 昭和46年5月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】未決勾留期間が確定判決に基づく刑の執行期間と重複する場合、その重複期間を刑法21条により本刑に算入することはできない。刑の執行を受けている状態は、未決勾留による身体拘束としての実質を欠くためである。 第1 事案の概要:被告人は窃盗罪で起訴され、昭和45年4月9日に勾留状の執行を受けた。一方、被告人…