判旨
未決勾留期間が確定判決に基づく刑の執行期間と重複する場合、その重複期間を刑法21条により本刑に算入することはできない。刑の執行を受けている状態は、未決勾留による身体拘束としての実質を欠くためである。
問題の所在(論点)
被告人が他の確定事件の刑の執行を受けている期間と、本件の未決勾留期間が重複している場合、当該期間を刑法21条に基づき本件の刑期に算入できるか。
規範
刑法21条の未決勾留日数の算入は、未決の身体拘束が実質的に刑の執行と同様の性質を有することに鑑みた制度である。したがって、被告人が他の確定判決に基づき現に刑の執行を受けている期間は、たとえ当該事件の勾留状の執行を受けていたとしても、これを本刑に算入することは許されない。
重要事実
被告人は窃盗罪で起訴され、昭和45年4月9日に勾留状の執行を受けた。一方、被告人は別の強盗致傷罪等の確定判決により懲役6年の刑に処されており、仮出獄中の昭和45年5月21日に仮出獄が取り消され、同日から残刑の執行が開始された。原審は、被告人が本件の控訴審継続中に刑の執行を受けていた期間のうち、80日間を本件の刑に算入する旨の判決を言い渡したため、検察官が上告した。
あてはめ
本件において、被告人は昭和45年5月21日から原判決言渡に至るまで、別件の確定判決による残刑の執行を受けていた。この期間は刑の執行としての身体拘束であり、本件における未決勾留の全期間がこれと重複している。このように他の刑の執行を受けている期間は、もはや未決勾留としての独自の実質を認められない。それにもかかわらず、原審が未決勾留日数として80日を算入したことは、刑法21条の解釈を誤った違法があるといえる。
結論
未決勾留日数が確定判決による刑の執行と重複する場合には、その日数を本刑に算入することはできない。よって、原判決の算入部分は破棄されるべきである。
実務上の射程
未決勾留日数の本刑算入(刑法21条)の可否が問われる事案において、別件での服役(既決の執行)がある場合に算入を否定する根拠として用いる。実務上、併合罪の関係にない別罪の執行期間との重複は算入対象外となることを明示する際に有用である。
事件番号: 昭和45(あ)175 / 裁判年月日: 昭和45年7月9日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】被告人が未決勾留を受けている期間中に、別の確定判決に基づく刑の執行を受けている場合、その重複する期間を刑法21条に基づき本刑に算入することはできない。 第1 事案の概要:被告人は窃盗罪により起訴され、一、二審を通じて勾留されていた。しかし、被告人はこれより前に強盗罪による懲役刑(懲役3年以上5年以…