原判決中、第一審判決が被告人に対し一二一四日の未決勾留日数のうち四〇〇日を本刑に算入したにすぎない点に裁量の誤りはないとした判断は、いまだ違法とはいえない。
未決勾留日数の本刑算入過少と刑訴法四一一条二号
刑法21条,刑訴法411条2号
判旨
未決勾留日数の本刑算入に関する裁判所の判断は、刑法21条に基づく裁量に委ねられており、被告人の不適切な行為等により審理が遅延した事情を考慮して算入日数を決定したとしても、直ちに裁量権の逸脱・乱用として違法となるものではない。
問題の所在(論点)
刑法21条に基づく未決勾留日数の本刑算入の決定において、被告人の自己の責に帰すべき事由による審理遅延を考慮して、算入日数を一部に留める判断が許されるか(裁量権の範囲)。
規範
刑法21条に基づく未決勾留日数の本刑算入は、裁判所の広範な裁量に委ねられている。その算入にあたっては、事案の性質、審理の経過、および勾留期間が延伸した原因等の諸事情を総合的に考慮して決定されるべきものであり、その判断が著しく不当でない限り、裁量の誤りとして違法とされることはない。
重要事実
被告人は、常習累犯窃盗等の罪で起訴され、第一審において1214日間の未決勾留を受けた。この間、被告人は拘置所内での異物嚥下や拒食による栄養失調等の行為を繰り返し、これに伴う出廷不能や治療等により審理が著しく遅延した。第一審判決は、右未決勾留日数のうち400日のみを本刑に通算したが、被告人はこの算入割合の低さが裁量権の濫用にあたるとして上告した。
あてはめ
本件では、第一審における未決勾留が1214日という長期に及んだ最大の原因は、被告人自身の異物嚥下や拒食による出廷不能といった、専ら被告人の責に帰すべき事由にあると認められる。このような被告人の不適切な態度によって生じた勾留期間の延伸分を本刑に算入しないことは、刑法21条の運用上、合理的な裁量の範囲内である。したがって、未決勾留日数の約3分の1に当たる400日を算入した第一審判決の判断を維持した原判決に違法はない。
結論
被告人の責に帰すべき事由による審理遅延がある場合、算入日数を制限する裁判所の判断には裁量の誤りはなく、本件上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
未決勾留日数の算入についての実務上の裁量権を認めた判例。答案上は、量刑判断の一部として刑法21条の裁量を論じる際に、審理経過や被告人の訴訟態度が考慮要素となり得ることを示す根拠として活用できる。ただし、本刑を超える身体拘束が生じるような特段の事情がある場合には、裁量の逸脱が認められる余地がある(反対意見参照)。
事件番号: 昭和24(れ)1109 / 裁判年月日: 昭和24年10月13日 / 結論: 棄却
未決勾留は、その名の示すごとく未だ有罪、無罪の決定しない者に對し審理の必要上爲される刑事訴訟手續上の自由の拘束であつてもとより刑罰の執行ではない。從つて、その目的も、拘束の場所も、その處理も、その効果も刑罰の執行と異なるものであるたゞ自由拘束の一點において自由刑の執行と類似するところがあるが故に刑法第二一條は、裁判所に…