一 窃盗を目的とする住居侵入の罪は、窃盗の着手にまで至らなかつた場合にも、盗犯等の防止及び処分に関する法律三条の常習累犯窃盗の罪と一罪の関係にある。 二 不起訴となつた住居侵入の罪についての未決勾留日数は、右と一罪の関係にある常習累犯窃盗の罪の本刑に算入することができる。
一 常習累犯窃盗の罪と窃盗の着手に至らない窃盗目的の住居侵入の罪との罪数関係 二 不起訴となつた住居侵入の罪についての未決勾留日数を右と一罪の関係にある常習累犯窃盗の罪の本刑に算入することの可否
刑法21条,刑法130条,盗犯等の防止及び処分に関する法律3条
判旨
窃盗目的の住居侵入罪は、窃盗の実行に着手したか否かにかかわらず、盗犯等防止法3条の常習累犯窃盗罪と法律上一罪の関係に立つ。したがって、不起訴となった住居侵入罪による未決勾留日数を、起訴された常習累犯窃盗罪の刑期に算入することは適法である。
問題の所在(論点)
窃盗目的で犯されたが窃盗の着手に至らなかった「住居侵入罪」と、起訴された「常習累犯窃盗罪」が法律上一罪の関係にあるか。また、この一罪関係に基づき、不起訴となった前者の未決勾留日数を後者の本刑に算入できるか。
規範
盗犯等防止法3条(常習累犯窃盗)は、一定の同種前科のある者が常習性の発現として犯した数個の窃盗罪等を包括して処罰し刑を加重する趣旨である。そのため、窃盗を目的として犯された住居侵入の罪は、窃盗の実行に着手に至った場合はもちろん、着手に至らなかった場合であっても、常習累犯窃盗罪と包括して法律上一罪(包括一罪)を構成する。
重要事実
被告人は、窃盗目的で住居に侵入したが、窃盗の実行の着手に至る前に発覚した等の事情により、住居侵入の罪については不起訴とされた。一方で、被告人は常習性の発現として別途数個の窃盗を犯しており、常習累犯窃盗罪(盗犯等防止法3条)で起訴された。第1審および原審は、不起訴となった住居侵入罪に基づく未決勾留日数を、起訴された常習累犯窃盗罪の本刑に算入することを認めたため、検察官が判例違反を理由に上告した。
あてはめ
本件における住居侵入は窃盗を目的として行われたものであり、被告人の窃盗の常習性が発現したものと認められる。盗犯等防止法3条の趣旨は常習性ある窃盗犯行を包括的に処罰することにある。そうすると、たとえ窃盗の着手に至らず住居侵入に留まったとしても、当該住居侵入は常習累犯窃盗罪の一部を構成すると解される(法律上一罪)。一罪を構成する以上、その一部(住居侵入)につき発せられた勾留状による未決勾留日数を、他の一部(常習累犯窃盗)の本刑に算入することは、刑法21条の趣旨に照らし正当である。
結論
窃盗目的の住居侵入罪と常習累犯窃盗罪は一罪の関係にあり、住居侵入罪による未決勾留日数を常習累犯窃盗罪の本刑に算入した原判断は正当である。
実務上の射程
常習累犯窃盗の包括一罪の範囲を、窃盗未遂に至らない予備的段階(窃盗目的の住居侵入)にまで広げた点に意義がある。答案上は、未決勾留日数の算入(刑法21条)の可否が問われる際、別罪(不起訴分)と起訴事実との「実質的一罪性」を肯定する根拠として用いる。
事件番号: 昭和58(あ)79 / 裁判年月日: 昭和58年11月10日 / 結論: 棄却
原判決中、第一審判決が被告人に対し一二一四日の未決勾留日数のうち四〇〇日を本刑に算入したにすぎない点に裁量の誤りはないとした判断は、いまだ違法とはいえない。