常習累犯窃盗の罪と軽犯罪法一条三号(侵入具携帯)の罪とが機会を異にして犯された場合には、たとえ侵入具携帯が常習性の発現と認められる窃盗を目的とするものであつたとしても、両罪は併合罪の関係にある。
常習累犯窃盗の罪と別の機会に窃盗目的で犯された軽犯罪法一条三号(侵入具携帯)の罪との罪数関係
盗犯等の防止及び処分に関する法律3条,軽犯罪法1条3号,刑法45条
判旨
常習累犯窃盗罪と、その常習性の発現とされる窃盗目的の侵入具携帯罪(軽犯罪法1条3号)が機会を異にして犯された場合、両罪は併合罪の関係に立つ。
問題の所在(論点)
常習累犯窃盗罪と、常習性の発現と認められる窃盗を目的とした侵入具携帯罪が、別個の機会に行われた場合における罪数関係(刑法45条前段)。
規範
常習的な犯行として行われる罪と、その手段的目的を有する罪であっても、それらが独立した機会に別個の犯意に基づき実行されたものであるならば、刑法45条の併合罪として処理すべきである。
重要事実
被告人は、昭和60年5月3日に大阪市内の寿司店で金員を窃取した(常習累犯窃盗罪)。その後、同月30日に同市内の公園にて、住居侵入・窃盗の目的で金槌等を隠し持っていた(軽犯罪法1条3号違反)。被告人はこれらが常習性の発現であるとして、罪数関係が問題となった。
あてはめ
本件における窃盗行為(5月3日)と侵入具携帯行為(5月30日)は、約4週間の時間的隔たりがあり、場所も異なることから「機会を異にして」行われたものと認められる。たとえ侵入具携帯が常習性の発現としての窃盗を目的とするものであったとしても、別個の機会に独立して行われた犯罪である以上、包括一罪や吸収関係とはならない。
結論
両罪は併合罪の関係にあると解するのが相当である。
実務上の射程
常習累犯窃盗罪の包括一罪の範囲に関する判断である。常習性が認められる場合でも、機会を異にする別個の犯罪類型(特に軽犯罪法違反)については、当然に包括一罪に吸収されるわけではなく、併合罪として処断されることを明確にしている。答案上は、常習犯の罪数判断において、行為の独立性・機会の別を重視する際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和55(あ)35 / 裁判年月日: 昭和55年12月23日 / 結論: 棄却
一 窃盗を目的とする住居侵入の罪は、窃盗の着手にまで至らなかつた場合にも、盗犯等の防止及び処分に関する法律三条の常習累犯窃盗の罪と一罪の関係にある。 二 不起訴となつた住居侵入の罪についての未決勾留日数は、右と一罪の関係にある常習累犯窃盗の罪の本刑に算入することができる。
事件番号: 令和2(あ)919 / 裁判年月日: 令和3年6月28日 / 結論: 棄却
前訴で住居侵入,窃盗の訴因につき有罪の第1審判決が確定した場合において,後訴の訴因である常習特殊窃盗を構成する住居侵入,窃盗の各行為が前訴の第1審判決後にされたものであるときは,前訴の訴因が常習性の発露として行われたか否かについて検討するまでもなく,前訴の確定判決による一事不再理効は,後訴に及ばない。