昭和三四年二月二四日午後八時三〇分から午後一〇時三〇分頃までの間に自転車一台が一関市a所在A病院玄関脇自転車置場において窃取されたこと、被告人は翌二五日午後三時四〇分頃および同日午後八時過頃自転車に乗つていたが、右午後八時過頃被告人が乗つていたものは右の被害品であること、右自転車は同月二六日同市b所在のB病院玄関口に置いてあつたこと、同病院には当時被告人の母Cが入院しており、被告人は同病院に寝泊りしていたことを根拠として第一審の窃盗の認定を支持するのは判例にいわゆる真実の高度の蓋然性があるということができる。 註。判例―昭和二三年八月五日第一小法廷判決昭和二三年(れ)第四四一号判例集二巻九号一一二三頁
判例にいわゆる「真実の高度の蓋然性」があるとされた事例。
刑訴法317条,刑訴法318条,刑訴法405条2号,刑法235条
判旨
窃取後、短時間のうちに被害品を所持していた事実は、真実の高度の蓋然性を裏付けるものとして窃盗罪の成立を推認させるに足りる。前科の存在は常習性の判断資料であって、犯罪事実自体の認定は証拠による合理的な推認に基づくべきである。
問題の所在(論点)
窃取直後の被害品所持という間接事実のみで、窃盗罪の構成要件該当事実について「真実の高度の蓋然性」を認めることができるか。また、被告人の前科を事実認定の資料とすることが許されるか。
規範
刑事裁判における事実認定は、証拠に基づき「真実の高度の蓋然性」を認めることが必要である。窃盗罪の認定において、被害品が盗まれてから近接した時間内に被告人が当該物品を占有・使用していた事実は、被告人が犯人であることを推認させる強力な間接事実となる。また、前科等の犯罪歴は情状(常習性等)の判断資料となり得るが、構成要件該当事実の認定は客観的な証拠に基づく証明の法理に従わなければならない。
重要事実
昭和34年2月24日午後8時半から10時半の間に、被害者が借用していた自転車が窃取された。被告人は、翌25日の午後3時40分頃および午後8時過ぎに自転車に乗っていたが、後者の際に乗っていたのは本件被害品であった。その後、自転車は被告人が寝泊まりしていた病院の玄関口で発見された。第一審および原審はこれらの事実に基づき、被告人を窃盗罪と認定した。
あてはめ
本件では、自転車の窃取から約22時間後という極めて近接した時間に、被告人が被害品そのものに乗って移動していた事実が認められる。さらに、当該自転車が被告人の生活拠点(病院)で発見されている。これらの事実は、被告人が窃盗犯人であることを強く推認させるものであり、これ以上に特段の立証を要さずとも「真実の高度の蓋然性」が認められる。なお、第一審が判示した前科は常習性認定の資料に過ぎず、事実認定自体は上述の証明法理に基づき適正に行われている。
結論
被告人が窃盗犯人であるとの認定は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
「近接所持の法理」を実務上裏付ける判例である。盗品を所持している事実から、直ちに窃盗犯人と推認するのではなく、時間的・場所的近接性や所持の態様を総合考慮して「真実の高度の蓋然性」を導く枠組みとして機能する。答案上は、間接事実による犯人性の立証の限界を示す際に活用できる。
事件番号: 昭和55(あ)35 / 裁判年月日: 昭和55年12月23日 / 結論: 棄却
一 窃盗を目的とする住居侵入の罪は、窃盗の着手にまで至らなかつた場合にも、盗犯等の防止及び処分に関する法律三条の常習累犯窃盗の罪と一罪の関係にある。 二 不起訴となつた住居侵入の罪についての未決勾留日数は、右と一罪の関係にある常習累犯窃盗の罪の本刑に算入することができる。
事件番号: 令和2(あ)919 / 裁判年月日: 令和3年6月28日 / 結論: 棄却
前訴で住居侵入,窃盗の訴因につき有罪の第1審判決が確定した場合において,後訴の訴因である常習特殊窃盗を構成する住居侵入,窃盗の各行為が前訴の第1審判決後にされたものであるときは,前訴の訴因が常習性の発露として行われたか否かについて検討するまでもなく,前訴の確定判決による一事不再理効は,後訴に及ばない。