一 盗犯等の防止及び処分に関する法律三条は、窃盗その他同法二条所定の罪を行なう習癖を有する者を、その習癖のない者より重く処罰するため、通常の窃盗その他の罪とは異なる新たな犯罪類型を定めたものである。 二 いわゆる常習累犯窃盗の罪についても、刑法の累犯加重の規定の適用がある。
一 盗犯等の防止及び処分に関する法律三条の趣旨 二 いわゆる常習累犯窃盗の罪と累犯加重
盗犯等の防止及び処分に関する法律2条,盗犯等の防止及び処分に関する法律3条,刑法8条,刑法56条,刑法59条
判旨
常習累犯窃盗罪(盗犯等防止法3条)は通常の窃盗罪とは異なる独自の犯罪類型を定めたものであり、刑法56条以下の累犯加重規定を適用しても、二重処罰の禁止を定めた憲法39条に違反しない。
問題の所在(論点)
盗犯等防止法3条の常習累犯窃盗罪に対し、刑法56条・57条の累犯加重規定を適用することは、二重処罰を禁じた憲法39条後段に違反するか。常習累犯窃盗罪自体の性質と累犯加重の可否が問題となる。
規範
常習累犯窃盗罪は、窃盗等の罪を行う習癖を有する者をその習癖のない者より重く処罰するために設けられた独自の犯罪類型であり、刑法上の累犯を理由として法定刑を加重したものでも、累犯加重を排除する趣旨を含むものでもない。したがって、同罪に対しても刑法所定の累犯加重の規定は当然に適用される。
重要事実
被告人が窃盗その他の罪を行う習癖を有し、盗犯等防止法3条に規定される常習累犯窃盗罪に該当する行為を行った。これに対し、さらに刑法上の累犯加重が適用されたことについて、弁護人は、既に累犯として加重されている罪に対して重ねて刑法による累犯加重を行うことは二重の処罰にあたり、憲法39条後段に違反すると主張して上告した。
あてはめ
常習累犯窃盗罪は習癖という属性に基づく「新たな犯罪類型」であり、刑法上の累犯規定とは次元が異なる。仮に累犯加重を否定すると、処断刑の上限(15年)が通常の窃盗罪に累犯加重をした上限(20年)を下回ることになり、習癖者を重く処罰する同法の趣旨に反する。そのため、同罪への累犯加重は二重加重にはあたらず、憲法の禁止する二重処罰の問題は生じない。
結論
常習累犯窃盗罪に対しても刑法の累犯加重規定を適用することができ、憲法39条には違反しない。本件上告を棄却する。
実務上の射程
盗犯等防止法3条の適用がある場合に、さらに刑法の累犯加重を重畳させることの正当性を基礎づける際に用いる。特別法が独自の犯罪類型を創設したものであるという構成は、他の特別刑法と刑法総則の関係を論ずる際の参考となる。
事件番号: 平成9(あ)66 / 裁判年月日: 平成9年4月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】盗犯等の防止及び処分に関する法律(盗犯等防止法)3条の常習累犯窃盗罪は、窃盗等の習癖を有する者を重く処罰するために設けられた独自の犯罪類型であり、刑法上の累犯加重とは性質を異にするため、憲法39条の二重処罰禁止には違反しない。 第1 事案の概要:被告人は窃盗の罪を犯したが、これまでに同種の犯罪によ…