債権執行における差押えによる請求債権の消滅時効の中断の効力が生ずるためには,その債務者が当該差押えを了知し得る状態に置かれることを要しない。
債権執行における差押えによる請求債権の消滅時効の中断の効力が生ずるためにその債務者が当該差押えを了知し得る状態に置かれることの要否
民法147条2号,民法155条
判旨
債権執行における差押えによる請求債権の消滅時効の中断において、債務者は中断行為の当事者そのものであるため、民法155条(旧法)の通知を要せず、債務者が差押えを了知し得る状態に置かれる必要もない。
問題の所在(論点)
債権執行における差押えにより請求債権の消滅時効が中断するために、民法155条(旧法)に基づき、債務者が当該差押えを了知し得る状態に置かれる必要があるか。
規範
民法148条(旧法)は時効中断の効力が当事者及びその承継人に及ぶと規定し、同155条(旧法)は、その原則を修正して当事者等以外で時効の利益を受ける者に効力を及ぼす場合に、不測の不利益を避けるため通知を要するとした規定である。したがって、債権執行の債務者は中断行為の当事者そのものであるから、差押えによる中断の効力が生ずるために、債務者が当該差押えを了知し得る状態に置かれることを要しない。
重要事実
上告人は被上告人に対し、平成12年に弁済期を迎える貸金債権を有していた。上告人は、平成20年6月、本件貸金債権を請求債権として、被上告人の銀行預金債権を対象とする差押命令を申し立て、第三債務者へ送達された。被上告人は、本件貸金債権の弁済期から10年が経過する前に、差押命令が被上告人自身に送達された等の事実がなく、差押えを了知し得る状態に置かれていなかったとして、時効消滅を理由に執行力の排除を求めた。
あてはめ
本件において、被上告人は差押えに係る債務者であり、中断行為の「当事者」に他ならない。民法155条(旧法)が定める通知の要件は、当事者以外の第三者が時効の利益を受ける場合に限定される。したがって、被上告人が本件差押えを了知し得る状態に置かれていたか否かにかかわらず、差押えの申立て及び第三債務者への送達等の執行手続がなされたことにより、当事者である被上告人との関係では当然に時効中断の効力が生じる。
結論
債務者が差押えを了知し得る状態に置かれる必要はなく、本件貸金債権の消滅時効は中断している。請求異議の訴えは棄却される。
実務上の射程
旧法下の判断であるが、現行法154条等においても「当事者」と「第三者」の区別は維持されており、債務者本人に対する効力発生に了知(通知)が不要であるとする理論構成は、答案作成上も有用である。
事件番号: 昭和52(オ)633 / 裁判年月日: 昭和55年12月9日 / 結論: 棄却
一 執行文付与に対する異議の訴における事実審の口頭弁論終結時までに生じていた請求に関する異議事由を後訴である請求に関する異議の訴において主張することは許される。 二 民訴法三八九条一項により事件を第一審に差戻すか否かは、原則として、控訴裁判所の裁量に委ねられる。
事件番号: 昭和58(オ)824 / 裁判年月日: 昭和59年3月9日 / 結論: 棄却
不動産の仮差押による時効中断の効力は、第三者の申立による強制競売により右不動産が競落されて仮差押の登記が抹消されても失われず、右抹消の時まで中断事由が存続したものというべきである。