不動産の仮差押による時効中断の効力は、第三者の申立による強制競売により右不動産が競落されて仮差押の登記が抹消されても失われず、右抹消の時まで中断事由が存続したものというべきである。
仮差押登記が競落により抹消された場合と時効中断の効力
民法147条2号,民法154条,民訴法(昭和54年法律第4号による改正前のもの)700条1項2号
判旨
仮差押えの登記が、競落に伴う嘱託によって抹消された場合は、民法154条(現154条2号)所定の取消しには当たらず、時効中断の効力は登記の抹消時まで存続する。
問題の所在(論点)
仮差押登記が第三者による競落に伴って抹消された場合、民法154条(現154条2号)にいう「取り消された」場合に該当し、時効中断の効力が失われるか。また、その中断効の持続期間はいつまでか。
規範
民法154条(改正前)にいう「取り消されたとき」とは、債権者の請求による取消しや、債権者が法律の規定に従わなかったことによる取消しを指す。一方、手続上の必然的帰結としてなされた登記の抹消は、時効中断の効力を遡及的に消滅させる同条の事由には当たらない。したがって、仮差押えによる時効中断の効力は、当該登記が存続する間継続し、抹消された時に終了する。
重要事実
債権者である被上告人は、上告人に対する貸金債権を保全するため、上告人所有の建物に仮差押えを行った。その後、当該建物が第三者に譲渡された後、別の強制競売により競落された。これに伴い、当時の民事訴訟法の規定に基づき、被上告人の仮差押登記は抹消された。その後、被上告人は改めて不動産強制競売を申し立てたが、上告人は貸金債権が時効消滅したと主張して争った。
あてはめ
本件における仮差押登記の抹消は、建物が競落されたことによる法的規定に基づきなされたものであり、債権者(被上告人)が自ら取り下げたものでも、手続上の懈怠があったものでもない。したがって、民法154条所定の「取消し」には該当しない。そのため、仮差押えによる中断効は、登記が抹消された時点まで継続していたといえる。その抹消時から新たに消滅時効が進行するが、本件ではその後速やかに強制競売の申立て等がなされており、時効は完成していないと解される。
結論
仮差押えによる時効中断の効力は、登記の抹消時まで存続しており、本件債権の消滅時効は完成していない。
実務上の射程
仮差押え等の執行行為による時効中断(更新)の期間に関する基本判例である。債権者の帰責事由なく手続が終了した場合には、遡及的消滅を否定し、終了時までの継続的効果を認める。答案上は、時効中断の効力の終期を特定する際の根拠として活用すべきである。
事件番号: 平成30(受)1137 / 裁判年月日: 令和元年9月19日 / 結論: 破棄自判
債権執行における差押えによる請求債権の消滅時効の中断の効力が生ずるためには,その債務者が当該差押えを了知し得る状態に置かれることを要しない。
事件番号: 昭和52(オ)595 / 裁判年月日: 昭和54年4月17日 / 結論: 破棄差戻
登記が偽造文書による登記申請に基づいてされた場合に登記義務者において登記の無効を主張することができないものというためには、その登記の記載が実体的法律関係に符合し、かつ、登記義務者においてその登記を拒みうる特段の事情がないというだけでなく、登記権利者において当該登記申請が適法であると信ずるにつき正当の事由があることを要す…
事件番号: 昭和28(オ)494 / 裁判年月日: 昭和28年10月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由として主張された憲法違反が、実質的に原審の訴訟手続違背や事実認定の不当をいうにすぎない場合には、最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律(昭和25年法律第138号)に規定する適法な上告理由に該当しない。 第1 事案の概要:上告人が原審の判決に対し、憲法違反を理由として上告を提…