一 仮差押えによる時効中断の効力は、仮差押えの執行保全の効力が存続する間は継続する。 二 仮差押えの被保全債権につき本案の勝訴判決が確定したとしても、仮差押えによる時効中断の効力が消滅するとはいえない。
一 仮差押えによる時効中断の効力の継続 二 本案の勝訴判決の確定と仮差押えによる時効中断の効力
民法147条2号,民法157条1項,民法174条ノ2
判旨
仮差押えによる時効中断の効力は、執行保全の効力が存続する間は継続し、本案の勝訴判決が確定してもこれに吸収されて消滅することはない。
問題の所在(論点)
仮差押えによる時効中断の効力の終期、および本案の勝訴判決が確定した場合に仮差押えによる中断効が判決の効力に吸収されるか(民法147条2号)。
規範
民法147条(現行149条等参照)が仮差押えを時効中断事由とする趣旨は、債権者が権利行使をした点にある。したがって、仮差押えによる時効中断の効力は、執行保全の効力が存続する間は継続すると解すべきである。また、法が仮差押えと裁判上の請求を別個の事由としている以上、本案の勝訴判決の確定により仮差押えの効力が吸収されることもない。
重要事実
債権者Dは、被上告人に対する貸金債権に基づき、不動産に仮差押命令(本件仮差押え)を得て登記を了した。その後、Dは本案訴訟を提起し、勝訴判決が確定。判決に基づき一部不動産を競売したが、他の不動産については仮差押えの登記が存続したまま10年以上が経過した。債務者の相続人(上告人)に対し、被上告人が消滅時効を援用して債務不存在確認を求めた。
あてはめ
本件では、一部不動産について現在も仮差押えの執行保全の効力が存続している。仮差押えの効力が存続する限り、債権者による権利行使は継続しているといえる。また、確定判決による時効中断(10年の進行)が開始したとしても、別個の事由である仮差押えによる中断効が当然に吸収・消滅する理由はない。したがって、仮差押えの効力が存続する範囲において、時効は中断したままであると解される。
結論
仮差押えの執行保全の効力が存続する限り、被保全債権の時効は完成しない。原審の消滅時効完成の判断には法令の解釈適用の誤りがある。
実務上の射程
仮差押えの中断効を「手続完了時」とする下級審判断を否定し、「執行存続中」は中断が続くことを明示した。本案判決後の消滅時効の成否を検討する際、仮差押登記の残存の有無を確認する場面で活用できる。
事件番号: 昭和58(オ)824 / 裁判年月日: 昭和59年3月9日 / 結論: 棄却
不動産の仮差押による時効中断の効力は、第三者の申立による強制競売により右不動産が競落されて仮差押の登記が抹消されても失われず、右抹消の時まで中断事由が存続したものというべきである。
事件番号: 昭和47(オ)1011 / 裁判年月日: 昭和48年6月14日 / 結論: 棄却
債務者が商法五二二条所定の消滅時効のみを援用することが明らかな場合には、たとえ債権が弁済期から一〇年を経過していても、民法一六七条所定の時効につき判断することを要しない。