仮差押えによる時効中断の効力は、仮差押解放金の供託により仮差押えの執行が取り消された場合においても、なお継続する。
仮差押解放金の供託による仮差押えの執行の取消しと時効中断の効力
民法147条2号,民法157条1項,民事執行法(平成元年法律第91号による改正前のもの)179条,民事保全法51条
判旨
仮差押解放金の供託により仮差押執行が取り消された場合であっても、執行保全の効力は供託金取戻請求権の上に存続するため、時効中断の効力はなお継続する。
問題の所在(論点)
仮差押解放金の供託を理由に仮差押執行が取り消された場合、仮差押えによる時効中断の効力(民法147条2号、現149条2号)は消滅するか。換言すれば、これが「時効中断の事由が終了したとき」に当たるかが問題となる。
規範
民法157条1項(現153条)の「事由が終了したとき」とは、権利確定や執行保全の目的が完全に失われた時を指す。仮差押解放金が供託された場合、当該解放金は仮差押えの目的物の代位物となり、債権者は将来の本案勝訴判決に基づき当該取戻請求権に対し強制執行をなし得る。したがって、執行保全の効力は供託金取戻請求権の上に存続しており、時効中断の事由は未だ終了していないと解すべきである。
重要事実
債権者(被上告人)は、債務者(上告人)の連帯保証債務を被保全債権として、債務者所有の不動産に対し仮差押執行を行った。これに対し債務者は、仮差押解放金を供託したため、当該不動産に対する仮差押執行は取り消された。債務者は、執行取消しによって時効中断の効力が消滅し、新たに時効が進行すると主張して争った。
あてはめ
本件では、不動産に対する仮差押執行自体は取り消されているが、これは債務者が供託した解放金によって代替されたに過ぎない。債務者は仮差押命令の取消し等を得ない限り供託金を取り戻せず、債権者は本案勝訴により同権利への執行が可能である。このように執行保全の効力が供託金取戻請求権に転化して存続している以上、中断の事由が終了したとはいえない。したがって、時効中断の効力は継続し、連帯保証債権の消滅時効は進行しないと解される。
結論
仮差押解放金の供託による執行取消しによっても、仮差押えによる時効中断の効力は消滅せず、依然として継続する。
実務上の射程
仮差押えによる時効中断の継続期間を論ずる際の重要判例である。解放金供託は単なる目的物の置換であり、債権者の法的地位を害さないというロジックを重視する。答案では、手続が形式的に終了(執行取消し)しても、実質的な保全状態が継続していれば時効は進行しないという理屈で使用する。
事件番号: 昭和45(オ)121 / 裁判年月日: 昭和47年11月28日 / 結論: 棄却
店舗を賃貸する旨の約定の不履行による損害のうち営業上の逸失利益の賠償請求権を被保全権利としてした仮差押は、通常の借家権価格相当の損害賠償請求権については、消滅時効を中断しない。