甲の債務者乙の連帯保証人である丙の債務を担保するため、丁が物上保証人となった場合において、甲が丁に対して競売を申し立て、その手続が進行することは、乙の主債務の消滅時効の中断事由に該当しない。
連帯保証債務の物上保証人に対する抵当権の実行と主債務の消滅時効の中断
民法147条,民法148条,民法149条,民法153条,民法155条,民法434条,民法458条,民事執行法45条2項,民事執行法188条
判旨
物上保証人に対する抵当権実行による競売手続は、主債務者に対する「請求」や「催告」に該当せず、主債務の消滅時効を中断する効力を持たない。
問題の所在(論点)
物上保証人に対する抵当権の実行としての競売申立て及び手続の進行が、主債務者に対する「請求」や「催告」として時効中断の効力を有するか。また、形式上の借主が時効を援用することが信義則に反するか。
規範
1. 抵当権の実行としての競売申立て及びその手続の進行は、被担保債権に関する裁判上の請求(民法147条1号、149条[現行147条1項1号])又はこれに準ずる時効中断事由には該当しない。 2. 執行裁判所による債務者への競売開始決定正本の送達は、執行手続上の告知にすぎず、被担保債権についての催告(民法153条[現行150条])としての効力も有しない。 3. したがって、連帯保証債務を担保する抵当権の実行は、連帯債務の規定(民法458条、434条[現行441条本文])を通じた主債務者への「履行の請求」としての効力も生じない。
重要事実
債権者である被上告人は、主債務者(上告人A1)及び連帯保証人(上告人A2)に対し、住宅ローン債権の履行を求めて提訴した。これに対し、上告人らは5年の商事消滅時効を援用。被上告人は、本件訴え提起前に、別の連帯保証人(訴外会社)の債務を担保するために物上保証人が設定した根抵当権の実行を申し立て、債務者である訴外会社に競売開始決定正本が送達されていたため、これにより時効が中断(裁判上の催告)していると反論した。
あてはめ
1. 抵当権実行手続は被担保債権の存否を確定する手続ではなく、債権者の関与も希薄であるため、「裁判上の請求」には当たらない。 2. 競売開始決定正本の送達は、財産差押えの告知や不服申立ての機会付与を目的とするものであり、債権者の債務者に対する意思表示ではないため、「催告」にも当たらない。 3. 上告人A1は謝礼を得て名義を貸したにすぎないが、自ら契約当事者としてローン契約を締結している以上、時効を援用することが直ちに信義則に反するとはいえない。
結論
本件競売申立ては主債務の消滅時効を中断せず、また時効援用も信義則に反しないため、主債務は時効により消滅している。被上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
物上保証人への競売開始決定が主債務者に送達された場合、民法155条(現行154条)により当該抵当権の債務者に対しては時効中断(更新・完成猶予)の効力が生じるが、本判決は、それが「主債務者」や他の「連帯保証人」に対する関係で「請求(履行の請求)」としての絶対的効力を生じさせるものではないことを明確にしている。答案上は、物上保証人への執行と主債務の中断を切り分けて論じる際に不可欠な判例である。
事件番号: 昭和47(オ)210 / 裁判年月日: 昭和48年2月16日 / 結論: 棄却
公正証書に関する請求異議訴訟において、債権者が応訴して債権の存在を主張した場合でも、右証書の作成嘱託についての代表権欠缺を理由に請求が認容され、その債権の存否が判断されなかつたときは、右債権につき、裁判上の請求に準ずる消滅時効中断の効力は生じない。