AのXに対する貸金債務についてYがXとの間で保証契約を締結した場合において,YがXから金員を借り受けた旨が記載された公正証書が上記保証契約の締結の趣旨で作成され, 上記公正証書に記載されたとおりYが金員を借り受けたとしてXがYに対して貸金の支払を求める旨の支払督促の申立てをしたとの事情があっても,上記支払督促は,上記保証契約に基づく保証債務履行請求権について消滅時効の中断の効力を生ずるものではない。
貸金の支払を求める旨の支払督促が,当該支払督促の当事者間で締結された保証契約に基づく保証債務履行請求権について消滅時効の中断の効力を生ずるものではないとされた事例
民法147条1号,民法150条
判旨
貸金請求の支払督促において、請求債権とされた貸金債権が実態としては保証契約に基づくものであったとしても、支払督促において「貸金の返還」を求めている以上、これとは別個の権利である「保証債務履行請求権」について消滅時効中断(現・時効更新等)の効力は生じない。
問題の所在(論点)
実態は保証債務であるにもかかわらず、公正証書の記載通り「貸金債権」としてなされた支払督促に、保証債務履行請求権の消滅時効を中断する効力が認められるか。
規範
消滅時効の中断(現・時効の完成猶予及び更新)の効力が生じるためには、裁判上の請求等の権利行使が、時効にかかっている当該権利自体について行われることを要する。請求債権の根拠となる事実が、本来の権利の成立を否定するような相容れない内容である場合には、本来の権利が行使されたものと評価することはできず、時効中断の効力は及ばない。
重要事実
債権者(被上告人)と債務者(上告人)は、第三者の債務を連帯保証する趣旨で「1億1000万円の借入」と記載した公正証書を作成した(本件保証契約)。その後、債権者はこの公正証書に基づき、保証債務ではなく「貸金債権」として支払督促を申し立て、確定した。これに対し債務者は、後の訴訟において保証債務履行請求権の時効消滅を主張した。
あてはめ
被上告人が申し立てた本件支払督促は、本件保証契約に基づく保証債務の履行ではなく、上告人が金員を借り受けたとする「貸金の返還」を求めたものである。この貸金返還請求権の根拠事実は、保証債務履行請求権の根拠事実と重なるものではなく、むしろ保証契約の成立を否定するものであり、両者は相容れない。したがって、本件支払督促において貸金債権が行使されたことをもって、別個の権利である保証債務履行請求権までもが行使されたと評価することはできない。
結論
本件支払督促は、保証債務履行請求権について消滅時効中断の効力を生じない。したがって、時効消滅の主張は認められ、被上告人の請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
裁判上の請求等による時効中断の対象範囲について、請求債権の同一性・関連性の判断基準を示した事例。実態が同じ経済的利益を目的としていても、請求の法的性質や根拠事実が相容れない場合には、時効中断の効力が及ばないことを明確にした。
事件番号: 昭和29(オ)93 / 裁判年月日: 昭和31年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実認定において、関連する刑事判決の確定等の事情があったとしても、原審が諸般の証拠を検討して連帯保証の事実を認定した過程に、審理不尽等の違法があるとはいえない。 第1 事案の概要:被上告人がDに対して有する貸金債権について、上告人が連帯保証をしたかどうかが争われた事案。上告人は、Dに対して刑事判決…