物上保証人に対する不動産競売において、開始決定の債務者への送達がいわゆる付郵便送達によりされた場合には、決定正本が郵便に付して発送されたことによっては被担保債権の消滅時効の中断の効力を生ぜず、右正本の到達によって初めて時効中断の効力を生ずる。
物上保証人に対する不動産競売の開始決定の債務者への送達がいわゆる付郵便送達によりされた場合における被担保債権の消滅時効の中断
民法147条,民法148条,民法155条,民訴法172条,民訴法173条,民事執行法45条2項,民事執行法188条
判旨
物上保証人に対する競売開始決定正本の送達が付郵便送達の方法でなされた場合、民法155条(改正前)による時効中断の効力は、発送時ではなく決定正本の到達時に発生する。
問題の所在(論点)
物上保証人の不動産に対する競売開始決定正本が、債務者に対し付郵便送達の方法で発送された場合、民法155条(現154条)にいう「時効の利益を受ける者への通知」があったとして、発送時に時効中断の効力が生じるか。
規範
物上保証人に対する差押えによる時効中断の効力が債務者に及ぶためには、債務者が競売手続の開始を了知し得る状態に置かれることを要する。したがって、付郵便送達(民訴法172条等)による場合、発送時に送達があったとみなす手続法上の効果は実体法上の通知には及ばず、正本の到達により初めて時効中断の効力が生じる。
重要事実
債権者である上告人は、物上保証人E所有の不動産につき根抵当権を実行し、執行裁判所は開始決定正本を債務者D建設に対し書留郵便に付して発送した(付郵便送達)。しかし、当該郵便は留置期間満了により返送され、債務者に到達しなかった。また、別途送付された普通郵便の通知書には被担保債権の表示が欠けていた。
あてはめ
付郵便送達による発送時の送達擬制は不動産競売の手続上の効果にとどまる。実体法上の時効中断が認められるためには、債務者が競売開始を了知し得る状態に置かれる必要があるところ、本件では正本が返送されており到達していないため、了知し得る状態になかったといえる。また、普通郵便による通知も、被担保債権が特定されていない以上、有効な通知とは認められない。
結論
本件開始決定正本の発送により、債務者に対する求償債権の消滅時効が中断したということはできない。
実務上の射程
物上保証人への差押えによる時効中断の範囲を画する重要判例。付郵便送達の発送時擬制(民訴107条3項等)という手続法上の理屈を実体法上の権利喪失場面に安易に拡大しない姿勢を示す。答案上は、時効中断の通知要件における「了知可能性」の具体的判断基準として活用すべきである。
事件番号: 昭和46(オ)774 / 裁判年月日: 昭和48年9月7日 / 結論: 棄却
手形債務を主たる債務として手形外の連帯保証契約が締結されている場合において、連帯保証人に対し裁判上の請求がされたときは、手形債務についても消滅時効が中断する。
事件番号: 平成5(オ)1788 / 裁判年月日: 平成8年7月12日 / 結論: 破棄差戻
物上保証人に対する不動産競売において、被担保債権の時効中断の効力は、競売開始決定正本が債務者に送達された時に生ずる。