仮差押えは、民法四三四条にいう「履行ノ請求」に含まれない。
仮差押えと民法四三四条にいう「履行ノ請求」
民法434条,民訴法(平成元年法律第91号による改正前のもの)741条,民訴法(昭和54年法律第4号による改正前のもの)750条
判旨
連帯債務者の一人に対する仮差押えは、旧民法434条(改正前)の「履行の請求」には該当せず、他の連帯債務者に対してその効力(絶対的効力)を及ぼさない。
問題の所在(論点)
旧民法434条(連帯債務者の一人に対する履行の請求の絶対的効力)における「履行の請求」に、仮差押えが含まれるか。
規範
旧民法434条(改正前)にいう「履行の請求」とは、債権者が債務者に対し、債務の履行を求める意思を直接的に表示する行為を指す。仮差押えは、執行保全を目的とする手続であり、債務者に対して直接的に履行を催告する意思表示(催告)そのものではないため、同条の「履行の請求」には含まれない。
重要事実
債権者が、連帯債務者の一人に対して仮差押えを実施した。その後、この仮差押えによる時効中断(現・時効完成猶予等)の効果が、他の連帯債務者にも及ぶか(絶対的効力が認められるか)が争点となった。
あてはめ
仮差押えは債権の保全を目的とする裁判上の手続であって、裁判上の請求(訴えの提起)等のように債務者へ直接履行を求める性質のものではない。したがって、旧民法434条の「履行の請求」には該当しないと解される。
結論
仮差押えは旧民法434条の「履行の請求」に含まれないため、他の連帯債務者に対してその効力は及ばない。
実務上の射程
2017年民法改正により、履行の請求の絶対的効力(旧434条)自体が廃止され、相対的効力が原則となった(新441条)。ただし、改正前民法が適用される事案や、他の時効中断事由の準用関係を検討する際の論理構成として、仮差押えが「請求」概念に含まれないとする本判例の視点は、用語の解釈上依然として意義を持つ。
事件番号: 平成7(オ)374 / 裁判年月日: 平成7年9月5日 / 結論: 棄却
物上保証人に対する不動産競売において、開始決定の債務者への送達がいわゆる付郵便送達によりされた場合には、決定正本が郵便に付して発送されたことによっては被担保債権の消滅時効の中断の効力を生ぜず、右正本の到達によって初めて時効中断の効力を生ずる。
事件番号: 昭和37(オ)1032 / 裁判年月日: 昭和38年10月8日 / 結論: 棄却
手形の裏書交付があつたからといつて、原因関係たる貸金債務の保証若しくは連帯保証契約を締結する意思を表示したものと解することはできない。