物上保証人に対する不動産競売において、被担保債権の時効中断の効力は、競売開始決定正本が債務者に送達された時に生ずる。
物上保証人に対する不動産競売において被担保債権の時効中断の効力が生ずる時期
民法147条,民法148条,民法155条,民事執行法45条2項,民事執行法188条
判旨
物上保証人に対する不動産競売の申立てによる被担保債権の消滅時効中断の効力(旧民法155条、現行154条)は、競売開始決定正本が債務者に送達された時に生じる。債権者と債務者の利益の調和を図るという同条の趣旨から、債務者が知らぬ間に不測の不利益を被ることを防ぐべきだからである。
問題の所在(論点)
物上保証人に対する不動産競売の申立てによって、主債務者に対する被担保債権の消滅時効が中断される時期はいつか。申立て時か、それとも債務者への開始決定正本の送達時か。
規範
物上保証人に対する不動産競売の申立てによる時効中断の効力は、債権者が競売の申立てをした時ではなく、競売開始決定正本が債務者に送達された時に生じる。旧民法155条(現行154条)が時効の利益を受ける者への通知を要求しているのは、債権者と債務者の利益の調和を図る趣旨であり、送達前に遡って効力を認めれば、手続を了知しない債務者に不測の不利益を与えるためである。
重要事実
債権者(被上告人)は、債務者Dに対する債権を被担保債権として、物上保証人(上告人)所有の不動産に根抵当権を設定していた。被上告人は、Dに対する勝訴判決確定から10年が経過する直前の平成4年4月3日に競売を申し立て、同月7日に開始決定がなされたが、Dに正本が送達されたのは10年経過後の同年6月13日であった。物上保証人は、正本送達時には既に債権が時効消滅していると主張し、登記の抹消を求めた。
事件番号: 平成8(オ)2422 / 裁判年月日: 平成11年9月9日 / 結論: 破棄自判
一 債権者が、根抵当権の極度額を超える金額の被担保債権を請求債権として当該根抵当権の実行としての不動産競売の申立てをし、競売開始決定がされて同決定正本が債務者に送達された場合、被担保債権の消滅時効中断の効力は、当該極度額の範囲にとどまらず、請求債権として表示された当該被担保債権の全部について生じる。 二 物上保証人に対…
あてはめ
本件では、債務者Dに対する確定判決により時効期間は10年(旧法)となり、起算日から10年を経過する日は平成4年4月18日であった。被上告人による競売申立ては同月3日であり、時効期間内になされている。しかし、競売開始決定正本がDに送達されたのは同年6月13日であり、時効期間満了後である。規範に照らせば、中断の効力は送達時に生じるため、申立てが期間内であっても、送達が期間後であれば時効を中断させることはできない。
結論
時効中断の効力は競売開始決定正本が債務者に送達された時に生じるため、本件の申立ては時効期間満了前に中断の効力を生じさせたとはいえない。原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
物上保証人だけでなく抵当不動産の第三取得者に対する競売請求でも同様の理が妥当する。実務上は、時効完成間際での競売申立てには送達の遅滞リスクがあることを意識し、債務者への別途の承認取得や仮差押え等の検討が必要となる。答案では時効中断の『効力発生時期』が問われた際に、旧法155条(現154条)の趣旨から論証する。
事件番号: 昭和47(オ)723 / 裁判年月日: 昭和50年11月21日 / 結論: 棄却
物上保証人に対する抵当権の実行により、競売裁判所が競売開始決定をし、これを債務者に告知した場合には、被担保債権についての消滅時効は中断する。
事件番号: 昭和36(オ)15 / 裁判年月日: 昭和38年10月10日 / 結論: その他
売買一方の予約に基づいて売買本契約が成立した場合は、売買予約締結当時を基準として詐害行為の要件の具備の有無を判断すべきである。
事件番号: 平成6(オ)2325 / 裁判年月日: 平成7年3月10日 / 結論: 棄却
物上保証人は、債務者の承認により被担保債権について生じた消滅時効中断の効力を否定することができない。
事件番号: 平成23(受)2094 / 裁判年月日: 平成25年2月28日 / 結論: その他
1 既に弁済期にある自働債権と弁済期の定めのある受働債権とが相殺適状にあるというためには,受働債権につき,期限の利益を放棄することができるというだけではなく,期限の利益の放棄又は喪失等により,その弁済期が現実に到来していることを要する。 2 時効によって消滅した債権を自働債権とする相殺をするためには,消滅時効が援用され…