物上保証人は、債務者の承認により被担保債権について生じた消滅時効中断の効力を否定することができない。
物上保証人が債務者の承認により被担保債権について生じた消滅時効中断の効力を否定することの許否
民法147条3号,民法148条,民法396条
判旨
物上保証人は、主債務者が行った承認による被担保債権の消滅時効中断(更新)の効力を否定することはできない。これは担保権の付従性および民法396条の趣旨に基づく帰結である。
問題の所在(論点)
主債務者が行った債務の承認による消滅時効中断の効力が、物上保証人に対しても及ぶか。特に、物上保証人が時効中断の効力を否定できるかが問題となる。
規範
物上保証人は、債務者の承認によって被担保債権について生じた消滅時効中断(現:時効の更新)の効力を否定することはできない。その根拠は、担保権の付従性および、債務者との関係で抵当権が存続する限り物上保証人に対しても権利行使を認める民法396条の趣旨にある。
重要事実
他人の債務を担保するため、自己の所有物件に根抵当権を設定した物上保証人が存在した。その後、主債務者が債権者に対して債務を承認したことにより、被担保債権の消滅時効が中断(更新)された。物上保証人は、この承認による時効中断の効力が自身には及ばないと主張し、根抵当権の消滅を争った。
事件番号: 平成8(オ)2422 / 裁判年月日: 平成11年9月9日 / 結論: 破棄自判
一 債権者が、根抵当権の極度額を超える金額の被担保債権を請求債権として当該根抵当権の実行としての不動産競売の申立てをし、競売開始決定がされて同決定正本が債務者に送達された場合、被担保債権の消滅時効中断の効力は、当該極度額の範囲にとどまらず、請求債権として表示された当該被担保債権の全部について生じる。 二 物上保証人に対…
あてはめ
まず、抵当権等の担保権は主債務に付随するものである(付従性)。次に、民法396条は「債務者及び抵当権設定者」以外の者に対する時効を定めることで、逆に債務者と抵当権設定者の間では担保権が独自に時効にかからないことを示唆している。本件において、主債務者の承認により被担保債権が存続している以上、担保権の付従性に照らし、物上保証人がその効力を否定することは法の予定するところではない。したがって、主債務者の承認の効力は物上保証人にも及ぶと評価される。
結論
物上保証人は主債務者の承認による時効中断の効力を否定できず、根抵当権は消滅しない。
実務上の射程
時効の援用権者(民法145条)としての物上保証人の地位を前提としつつ、被担保債権そのものが主債務者の行為で維持された場合の制約を示す判例である。保証人についても同様の法理(民法457条1項)があるが、物上保証人についても明文なき付従性の帰結として同様に扱うべきとする。答案では、物上保証人の援用権を論じる際、主債務者が承認を行っている場合の反論として本法理を提示する。
事件番号: 平成5(オ)1788 / 裁判年月日: 平成8年7月12日 / 結論: 破棄差戻
物上保証人に対する不動産競売において、被担保債権の時効中断の効力は、競売開始決定正本が債務者に送達された時に生ずる。
事件番号: 平成6(オ)1835 / 裁判年月日: 平成7年6月23日 / 結論: 棄却
一 債権者甲の債務者乙に対する債権を担保するために所有不動産に根抵当権を設定した丙が甲との間に民法五〇四条に規定する担保保存義務を免除する旨の特約をしていた場合に、甲が、右担保に追加して乙所有の不動産に設定を受けた根抵当権を放棄した上、丙に対し右特約の効力を主張することは、乙から設定を受けた右追加担保が甲の乙に対する追…
事件番号: 昭和63(オ)357 / 裁判年月日: 平成2年6月5日 / 結論: 破棄自判
売買予約に基づく所有権移転請求権保全の仮登記の経由された不動産につき抵当権の設定を受け、その登記を経由した者は、予約完結権の消滅時効を援用することができる。
事件番号: 昭和34(オ)415 / 裁判年月日: 昭和37年5月24日 / 結論: 破棄自判
甲の代理人丙が、その権限をこえて乙との間に甲所有の不動産につき乙のために根抵当権設定契約を締結し、かつ甲名義の偽造登記申請委任状によつてその登記をなした場合、右設定契約を締結しおよび登記申請委任状を乙に交付する等登記申請に協力する関係において、乙が丙に右設定契約の締結ならびに登記の申請について甲の代理権ありと信ずべき正…