物上保証人に対する抵当権の実行により、競売裁判所が競売開始決定をし、これを債務者に告知した場合には、被担保債権についての消滅時効は中断する。
物上保証人に対する抵当権の実行による競売開始決定が債務者に告知された場合と被担保債権の消滅時効の中断
民法147条,民法148条,民法155条,民訴法204条,競売法25条,競売法27条
判旨
物上保証人に対する競売申立てによる時効中断の効力は、裁判所から債務者へ競売開始決定正本が送達された場合、民法155条(現154条等)に基づき債務者にも及ぶ。
問題の所在(論点)
物上保証人の不動産に対する競売申立て(差押え)の時効中断効が、民法155条(現154条等参照)に基づき債務者に及ぶための要件は何か。特に、裁判所による決定正本の送達が同条の「通知」にあたるか。
規範
1. 競売法による競売は、被担保債権の実行手段として差押えと同等の時効中断効を有する。 2. 民法155条(旧法)は、差押え等の当事者以外の者が時効利益を受ける場合、その者への通知を条件に中断効を及ぼす趣旨である。 3. 当該通知は債権者自ら行う必要はなく、裁判所による競売開始決定正本の送達をもってこれに代えることができる。
重要事実
債権者が物上保証人の所有不動産に対し、被担保債権の実行として任意競売の申立てを行った。競売裁判所は競売開始決定を下し、手続の利害関係人である債務者に対し、その決定正本を送達した。債務者は、自身が差押えの当事者ではないこと、また債権者から直接通知を受けていないことを理由に、被担保債権の消滅時効中断の効果を否定した。
事件番号: 昭和40(オ)1110 / 裁判年月日: 昭和43年2月29日 / 結論: 棄却
貸金債権担保のため不動産に抵当権が設定され、あわせて同一債権保全のため右不動産について代物弁済の予約が締結された場合において、右抵当権の実行による競売手続が開始したときは、右競売手続が競売申立の取下その他の事由により終了しないかぎり、債権者が代物弁済の予約の完結権を行使することは許されない。
あてはめ
1. 競売申立ては被担保債権の強力な権利実行行為であり、実質的に債務者に対する差押えと差異はない。 2. 民法155条が通知を要求するのは、時効利益を受ける者が不測の不利益を被らないようにするためである。 3. 本件では、競売裁判所が債務者に対し決定正本を送達しており、これにより債務者は権利行使の事実を認識し得る。したがって、債権者自身による通知でなくとも、同条の趣旨を充足する十分な通知といえる。
結論
債務者は民法155条により被担保債権の消滅時効中断の効果を受ける。裁判所による競売開始決定正本の送達は、同条所定の通知として有効である。
実務上の射程
物上保証人への権利行使が債務者の時効を中断させるかという論点で必須の判例。現行法下(154条等)でも、裁判上の催告や差押えの通知に関する解釈として射程を有する。答案では「153条・154条の趣旨」として、債務者の知る機会の保障と権利行使の明確性の観点から論じる際に引用する。
事件番号: 昭和46(オ)503 / 裁判年月日: 昭和49年10月23日 / 結論: 破棄差戻
一、債権者が、金銭債権の満足を確保するために、債務者との間にその所有の不動産につき、代物弁済の予約、停止条件付代物弁済契約又は売買予約により、債務の不履行があつたときは債権者において右不動産の所有権を取得して自己の債権の満足をはかることができる旨を約し、かつ、停止条件付所有権移転又は所有権移転請求権保全の仮登記をしたと…
事件番号: 平成5(オ)1788 / 裁判年月日: 平成8年7月12日 / 結論: 破棄差戻
物上保証人に対する不動産競売において、被担保債権の時効中断の効力は、競売開始決定正本が債務者に送達された時に生ずる。
事件番号: 昭和40(オ)656 / 裁判年月日: 昭和41年11月10日 / 結論: 棄却
一審判決の送達が不適法であつても、控訴審において異議なく訴訟を遂行してきた以上、適法な上告理由とならない。
事件番号: 昭和56(オ)553 / 裁判年月日: 昭和57年9月10日 / 結論: 破棄差戻
競売手続停止の仮処分に違反して競売手続が続行された場合であつても、競落代金が支払われて競売手続が完了したときは、仮処分債権者は、競落不動産についての競落人の所有権の取得を否定することができない。