貸金債権担保のため不動産に抵当権が設定され、あわせて同一債権保全のため右不動産について代物弁済の予約が締結された場合において、右抵当権の実行による競売手続が開始したときは、右競売手続が競売申立の取下その他の事由により終了しないかぎり、債権者が代物弁済の予約の完結権を行使することは許されない。
抵当権実行による競売手続の開始と同一債権保全のために締結された代物弁済の予約完結権行使の許否
民法369条,民法482条
判旨
抵当権と併せて代物弁済予約を締結した債権者が、抵当権実行の競売を申し立てた場合、その手続が終了しない限り予約完結権を行使することは許されない。これは債権者が選択した債務清算の方途に拘束されるべきであり、競売法上の利害関係人の保護という趣旨にも基づくものである。
問題の所在(論点)
抵当権の実行(競売申立)による債権回収の手続が進行している最中に、同一の目的物について併存する代物弁済予約の完結権を行使することができるか。
規範
貸金債権担保のため不動産に抵当権を設定し、併せて代物弁済予約を締結した場合、債権者が抵当権実行のため競売申立をし、その手続が進行を開始したときは、競売申立を有効に取り下げるか、または手続がその他の事由により終了しない限り、予約完結権の行使は許されない。これは、債権者が優先的満足を図る手段を「選択行使」すべき趣旨に反すること、および競売手続上の利害関係人を保護する法の趣旨に調和させる必要があるからである。
重要事実
上告人は、被上告金庫に対する債務を担保するため、所有不動産に根抵当権を設定し、併せて代物弁済予約(仮登記)を締結した。その後、債務遅滞により被上告金庫が競売を申し立てたが、手続進行中に訴外Eが代位弁済を行い、競売申立人の地位および予約上の権利を承継した。Eは競売申立の取下げを申請したが、利害関係人の同意が得られず効力を生じなかった。この競売手続が進行している状態で、Eが予約完結権を行使したため、その効力が争われた。
事件番号: 昭和46(オ)503 / 裁判年月日: 昭和49年10月23日 / 結論: 破棄差戻
一、債権者が、金銭債権の満足を確保するために、債務者との間にその所有の不動産につき、代物弁済の予約、停止条件付代物弁済契約又は売買予約により、債務の不履行があつたときは債権者において右不動産の所有権を取得して自己の債権の満足をはかることができる旨を約し、かつ、停止条件付所有権移転又は所有権移転請求権保全の仮登記をしたと…
あてはめ
本件において、承継人Eが予約完結権を行使した当時、不動産に対する競売手続は依然として進行中であった。債権者が一度抵当権実行という清算手段を選択した以上、その手続を適法に終了させないまま別個の手段(代物弁済)による満足を図ることは、選択行使の趣旨に反し許されない。したがって、Eは完結権を行使しうる地位になく、その行使は無効といえる。
結論
競売手続が進行中である限り、代物弁済の予約完結権の行使は認められず、Eによる権利行使は効力を生じない。
実務上の射程
抵当権と代物弁済予約(仮登記担保)が併用される実務において、債権者の二重の権利行使を制約する射程を持つ。競売申立後の取下げに利害関係人の同意が必要な段階(最高価買受申込人の出現後等)では、特に本判例の制限が実務上重要となる。
事件番号: 昭和40(オ)656 / 裁判年月日: 昭和41年11月10日 / 結論: 棄却
一審判決の送達が不適法であつても、控訴審において異議なく訴訟を遂行してきた以上、適法な上告理由とならない。
事件番号: 昭和47(オ)723 / 裁判年月日: 昭和50年11月21日 / 結論: 棄却
物上保証人に対する抵当権の実行により、競売裁判所が競売開始決定をし、これを債務者に告知した場合には、被担保債権についての消滅時効は中断する。
事件番号: 昭和42(オ)1472 / 裁判年月日: 昭和44年2月13日 / 結論: 破棄差戻
一個の債権担保のため、甲乙丙不動産につき停止条件付代物弁済契約がされるとともに、所有権移転請求権保全の仮登記がされている場合において、債権者が甲不動産を代物弁済により所有権を取得し、それに基づいて所有権移転登記を経由したにすぎないときは、その後乙不動産につき所有権移転請求権保全の請求権を譲り受けた者がした代物弁済による…
事件番号: 昭和39(オ)919 / 裁判年月日: 昭和40年3月11日 / 結論: 棄却
不動産を目的とする代物弁済の予約完結の意思表示がなされたときは、これにより、該不動産の所有権移転の効果が生ずるものと解すべきである。