一個の債権担保のため、甲乙丙不動産につき停止条件付代物弁済契約がされるとともに、所有権移転請求権保全の仮登記がされている場合において、債権者が甲不動産を代物弁済により所有権を取得し、それに基づいて所有権移転登記を経由したにすぎないときは、その後乙不動産につき所有権移転請求権保全の請求権を譲り受けた者がした代物弁済による所有権取得登記は実質関係なくしてされた無効の登記であるとの判断には、審理不尽、理由不備の違法がある。
一個の債権のため数個の不動産につき停止条件付代物弁済契約がされている場合にその一不動産に対する代物弁済がされたとして本登記がされたときの他の不動産の帰すう
民法482条,民訴法395条1項6号
判旨
複数の不動産に代物弁済予約の仮登記がなされた後、一部の不動産により債権全額が消滅したにもかかわらず、他の不動産につき本登記がなされた場合、当該本登記の抹消を求めることができるが、原審が債務消滅の判断を回避して請求を認容した点には理由不備の違法がある。
問題の所在(論点)
複数の不動産を担保とする代物弁済予約において、一部不動産による弁済で債権が消滅した場合、他の不動産についてなされた所有権移転登記の効力はどうなるか。また、裁判所が債権消滅の成否を判断せずに登記抹消を命じることの是非。
規範
代物弁済予約に基づく所有権移転登記(本登記)の有効性は、原因となる債権の存否に依存する。予約完結権の行使または代物弁済の実行以前に、被担保債権が別不動産の代物弁済等により消滅していれば、残る不動産の仮登記は無効となり、これに基づく本登記も原因を欠く無効な登記として抹消を免れない。
重要事実
債権者Dは、債務者Eに対する10万円の貸金債権を担保するため、E所有の3筆の宅地(本件宅地を含む)に代物弁済予約に基づく所有権移転請求権保全の仮登記を経由した。その後、Dは3筆のうち1筆について代物弁済を受け、所有権を取得した。被上告人(Eから所有権を承継した者)は、この代物弁済により10万円の債権全額が消滅したため、本件宅地の仮登記は無効になったと主張。しかし、上告人はDから予約上の権利を譲り受けたとして本件宅地の本登記を完了させた。原審は、10万円の債権全額が消滅したか否かの判断を明示的に除外したまま、上告人が所有権を取得したとは認められないとして、被上告人の本登記抹消請求を認容した。
事件番号: 昭和41(オ)602 / 裁判年月日: 昭和43年3月7日 / 結論: 破棄差戻
一、判示の事情により、甲不動産につき抵当権設定契約および代物弁済予約形式の合意がされるとともに、乙不動産につき同一債権の担保を目的とする所有名義移転の合意がされた場合において、右両不動産の価額と弁済期までの債務元利金額とが合理的均衡を失するときは、債権者は、特別な事情のないかぎり、右両不動産を換価処分してこれによつて得…
あてはめ
被上告人の請求原因は「他物件の代物弁済による債権全額の消滅」にあり、これにより本件宅地の仮登記が実体上の根拠を失った(無効になった)点にある。それにもかかわらず、原審は第一審判決のうち「債権全額が消滅した」と判断した部分をあえて引用から除外している。この場合、本件宅地に適法な仮登記および本登記が存在する以上、債権消滅の事実が確定されない限り、上告人が所有権を取得できないとする法的根拠が失われる。予約完結権の行使等の有無を検討する以前に、その前提となる債権の存否こそが本件の審理の核心であり、これを看過して抹消を命じるのは論理的に不十分である。
結論
原判決には審理不尽および理由不備の違法がある。よって、原判決を破棄し、債権消滅の有無および本登記の有効性をさらに審理させるため、事件を原審に差し戻す。
実務上の射程
抵当権類似の担保的機能を果たす代物弁済予約において、被担保債権の消滅が登記の効力に直結することを確認した事例。答案上は、物権的登記抹消請求の要件(所有権の帰属および登記の無効原因)において、担保権の付随性に基づき債権消滅を主張する際の立証の重要性を示すものとして活用できる。
事件番号: 昭和50(オ)932 / 裁判年月日: 昭和51年4月8日 / 結論: 棄却
先順位受附の登記申請人が、後順位受附の登記申請に基づき不動産登記法四八条に違反してされた登記につき、同条違反だけを理由にその抹消登記手続を求めることは許されない。
事件番号: 平成16(オ)402 / 裁判年月日: 平成17年12月15日 / 結論: 破棄差戻
甲名義の不動産につき,甲から乙,乙からYが順次相続したことを原因として直接Yに対して所有権移転登記がされている場合に,甲の相続につき共同相続人Xが存在するときは,Yが上記不動産につき共有持分権を有しているとしても,Xは,Yに対し,上記不動産の共有持分権に基づき,上記登記の全部抹消を求めることができる。
事件番号: 平成11(オ)773 / 裁判年月日: 平成12年1月27日 / 結論: その他
甲名義の不動産につき、甲から乙、乙から丙への順次の相続を原因として直接丙に対する所有権移転登記がされているときに、右登記を甲の共同相続人丁及び乙に対する所有権移転登記並びに乙から丙に対する持分全部移転登記に更正することはできない。