判旨
第一審判決が主文において一部の土地の記載を脱落させたことは、更正決定により補正可能な明白な誤謬であり、また控訴審が一部請求の裁判を脱漏しても当該部分は原審に係属し追加判決を要するにすぎないため、いずれも判決破棄の理由とはならない。
問題の所在(論点)
1.判決理由で認容すべきとした物件を主文に記載し忘れた場合、直ちに判決に違法があるといえるか。2.控訴審が請求の一部について裁判を脱漏した場合、それが上告審における判決破棄の理由となるか。
規範
判決の主文に特定の物件の記載を脱落させたとしても、それが判決理由に照らして明白な誤謬(旧民訴法194条、現行民訴法257条1項)である場合には、更正決定によって付加すれば足り、判決の違法とはならない。また、裁判所が請求の一部について裁判を脱漏した場合には、その部分は依然として当該裁判所に係属し、追加判決(旧民訴法189条、現行民訴法258条1項)によって解決されるべき事案であるから、これをもって判決全体の破棄理由とすることはできない。
重要事実
上告人らは、被上告人(原告)から不動産売買予約が無効であるとして登記抹消手続を請求された。第一審判決は理由中で土地および建物の抹消請求を認容しながら、主文で土地の記載を脱落させた。さらに、原審(控訴審)も土地に関する抹消登記請求の当否について裁判を脱漏した状態で判決を言い渡したため、上告人らはこれらの手続的瑕疵を理由に上告を申し立てた。
あてはめ
第一審判決については、理由中で土地・建物の双方について認容すべき旨を判示しており、主文における土地の記載漏れは客観的に見て「明白な誤謬」といえる。したがって更正決定での対応が可能であり、判決を破棄すべき違法はない。原判決(控訴審)の裁判脱漏については、法律上、脱漏した部分は判決によって完結しておらず、依然として原審に係属しているものと扱われる。したがって、未完結の部分については原審による追加判決を求めるべきであり、上告審が判決全体を破棄して更正させる性質の問題ではない。
結論
本件各判決の記載脱落および裁判脱漏は、更正決定または追加判決によって是正されるべき事態であり、判決自体の違法として破棄の理由にはならない。上告棄却。
事件番号: 昭和30(オ)854 / 裁判年月日: 昭和31年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に影響を及ぼすべき違法があるか否かは、認定の基礎となった証拠の一部に瑕疵があったとしても、他の証拠によって事実認定を維持できる場合には否定される。 第1 事案の概要:原審において事実認定の基礎とされた証拠のうち、乙第二号証および第三号証について、上告人は「単に市長へ届け出られた書類であることを…
実務上の射程
判決の形式的瑕疵(書き漏らし)と実体的な審理不尽を区別する際の指標となる。答案上は、民事訴訟法における「判決の更正」や「裁判の脱漏」の具体例として、またそれらが上訴理由(判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反)を構成しない限界事例として活用できる。
事件番号: 昭和32(テ)22 / 裁判年月日: 昭和32年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法違反を主張する上告であっても、その実質が原審の事実認定を非難するにすぎない場合は、特別上告の適法な理由とはならない。 第1 事案の概要:上告人が憲法違反を理由として特別上告を提起したが、その主張の内容は、原判決が行った事実認定の手続きや結果に対する不服申し立てであった。 第2 問題の所在(論点…
事件番号: 昭和42(オ)1472 / 裁判年月日: 昭和44年2月13日 / 結論: 破棄差戻
一個の債権担保のため、甲乙丙不動産につき停止条件付代物弁済契約がされるとともに、所有権移転請求権保全の仮登記がされている場合において、債権者が甲不動産を代物弁済により所有権を取得し、それに基づいて所有権移転登記を経由したにすぎないときは、その後乙不動産につき所有権移転請求権保全の請求権を譲り受けた者がした代物弁済による…
事件番号: 昭和36(オ)154 / 裁判年月日: 昭和36年10月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決書の当事者表記に明らかな誤記がある場合でも、判決の更正決定によって修正されたときは、当該誤記を理由として判決を破棄することはできない。 第1 事案の概要:原判決において、被控訴人と記載すべき箇所を「控訴人」と誤記する当事者の表記ミスが存在した。しかし、原審(控訴審裁判所)は、上告審の判断前に昭…
事件番号: 昭和31(オ)787 / 裁判年月日: 昭和33年8月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に影響を及ぼさない事実認定の過誤や、傍論にすぎない不要な説示の違法を主張する上告理由は、原判決の破棄事由には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が認定した事実のうち「上告人が訴外Bのために家屋を移築すべき宅地の借受交渉を被上告人に対して行った」とする点に事実誤認があると主張した。ま…