判旨
判決書の当事者表記に明らかな誤記がある場合でも、判決の更正決定によって修正されたときは、当該誤記を理由として判決を破棄することはできない。
問題の所在(論点)
判決書における当事者の呼称の取り違え(誤記)が、判決の破棄事由となるか。また、判決後に更正決定がなされた場合にその違法性が治癒されるか。
規範
判決書に書き損じ、計算違いその他これらに類する明白な誤りがあるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、いつでも更正決定をすることができる。かかる更正決定が適法になされた場合には、原判決の誤記は解消されたものとみなされ、上告理由とはならない。
重要事実
原判決において、被控訴人と記載すべき箇所を「控訴人」と誤記する当事者の表記ミスが存在した。しかし、原審(控訴審裁判所)は、上告審の判断前に昭和36年1月30日付で更正決定を行い、当該誤記部分を正しく更正した。上告人は、この当初の誤記を理由として上告を申し立てた。
あてはめ
本件では、原判決の所論摘示部分において「被控訴人」を「控訴人」と誤記した事実は認められる。しかし、原審は適法に更正決定を行い、当該誤りを取り消している。したがって、判決内容に影響を及ぼす誤りがあったとはいえず、上告人が主張する誤記の存在は、既に適法な手続によって是正されたものであると評価される。
結論
更正決定により誤記が修正されている以上、上告理由は認められず、本件上告は棄却される。
実務上の射程
判決書の形式的・明白な誤りについては、民事訴訟法257条1項(旧401条関連)に基づく更正決定の対象となることを示している。実務上、当事者の呼称の取り違え程度であれば、更正によって治癒されるため、上告審での争点化は困難であることを示唆するものである。
事件番号: 昭和28(オ)128 / 裁判年月日: 昭和28年10月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決書に証拠番号の誤記があったとしても、それが単なる表記上の誤りであることが明白な場合には、上告理由とはならない。 第1 事案の概要:原判決において、配当期日呼出状が送達された事実を認定する際、その証拠として「乙第三号証の一乃至三」と記載された。しかし、実際には当該事実は「乙第三号証の一乃至五」に…
事件番号: 昭和26(オ)840 / 裁判年月日: 昭和29年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産登記の記載が取得原因において事実と異なっていたとしても、現在の権利関係に合致している限り、その登記の抹消を請求することはできない。 第1 事案の概要:亡Dは、隠居前に本件不動産を被上告人に対して贈与した。しかし、本件不動産に関する登記上の取得原因は、この贈与という事実とは異なる内容で記載され…
事件番号: 昭和31(オ)445 / 裁判年月日: 昭和31年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実認定において、相反する当事者の陳述や証人の証言から、いずれを信用して採用し、いずれを排斥するかは、特段の事情がない限り裁判所の自由な心証に委ねられる。 第1 事案の概要:上告人は、消費貸借の弁済期に関する認定、および被上告人による弁済の提供の事実認定に際し、原審が特定の陳述を信用し、他を排斥し…
事件番号: 昭和25(オ)66 / 裁判年月日: 昭和27年5月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実認定の矛盾を理由とする判決理由の齟齬の主張に対し、原審が認定した事実は相互に矛盾せず同時に認定可能であるとして、上告を棄却した判例である。 第1 事案の概要:上告人は、原審が認定した各事実が相互に相容れないものであると主張し、そのような矛盾する事実を同時に認定した原判決には理由の齟齬があるとし…