判旨
不動産登記の記載が取得原因において事実と異なっていたとしても、現在の権利関係に合致している限り、その登記の抹消を請求することはできない。
問題の所在(論点)
登記上の取得原因が実際の権利承継の原因と合致しない場合、その登記は無効として抹消請求の対象となるか。実体関係に符合する登記の有効性が問題となる。
規範
不動産の登記が現在の実体的な権利関係に符合している場合には、たとえその登記手続上の原因(取得原因)に関する記載が真実と異なっていたとしても、当該登記は有効なものとして保護される。したがって、実体権利を保持しない者は、登記の不一致のみを理由にその抹消を請求することはできない。
重要事実
亡Dは、隠居前に本件不動産を被上告人に対して贈与した。しかし、本件不動産に関する登記上の取得原因は、この贈与という事実とは異なる内容で記載されていた。上告人は、登記上の取得原因が事実と異なることを理由に、当該登記の抹消を求めて提訴した。
あてはめ
本件において、原審は証拠に基づき、亡Dから被上告人への本件不動産の贈与があったという事実を認定している。この認定によれば、被上告人は本件不動産の実体的な所有権を取得しているといえる。そうである以上、登記簿上の取得原因の記載が実際の贈与という事実と相違していたとしても、本件登記は現在の権利主体を正しく反映しており、実際の権利関係に符合していると解される。
結論
本件登記は実体的な権利関係に符合するものであるから、取得原因の記載が事実と異なっていても、これに対する抹消請求は許されない。
実務上の射程
実体関係に符合する登記の有効性(物権変動の態様が異なっても現在の権利者が正しければ有効)という確立された法理の根拠として利用する。主に不動産登記法上の更正登記で足りる場面や、中間省略登記の有効性議論、不実の登記をめぐる抹消請求の可否などで引用される。
事件番号: 昭和38(オ)1332 / 裁判年月日: 昭和40年7月22日 / 結論: 棄却
農地の権利移転についての知事の許可書の内容が不当に改ざんされたからといつて、一たん発生した許可処分の効力に何らの消長をもきたさない。
事件番号: 昭和34(オ)246 / 裁判年月日: 昭和36年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産登記の存在から実体法上の権利関係が推認されるという登記の推定力を認めるとともに、二段の推定に関し、印影が本人の印章によるものであれば、特段の事情がない限り文書全体の真正成立が推定されるとした。 第1 事案の概要:被上告人の父Dは、上告人の父Eの負債整理の際、貸金担保として土地等を被上告人名義…
事件番号: 昭和28(オ)808 / 裁判年月日: 昭和30年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】要素の錯誤による無効主張に対し、裁判所が錯誤の存在自体を否定した場合、併せて示された「重過失の有無」に関する判断は、仮定的前提に基づく不要な説示にすぎず、判決に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:上告人の養母Dは、本件物件を被上告人に売却したが、上告人は当該売買に要素の錯誤(民法95条)があると…
事件番号: 昭和37(オ)396 / 裁判年月日: 昭和40年10月12日 / 結論: 棄却
第一審判決主文に民訴法第一九四条にいう明白な誤謬がある場合、控訴裁判所が控訴棄却の判決をするにあたり判決の理由中に理由を示し主文において右誤謬を更正しても違法ではない。