第一審判決主文に民訴法第一九四条にいう明白な誤謬がある場合、控訴裁判所が控訴棄却の判決をするにあたり判決の理由中に理由を示し主文において右誤謬を更正しても違法ではない。
控訴審判決の主文で第一審判決の明白な誤謬を更正することの適否
民訴法194条
判旨
不動産の共有者の一人は、共有持分権に基づく妨害排除請求として、当該不動産について無効な所有権移転登記を有する者に対し、その登記の全部の抹消を請求することができる。
問題の所在(論点)
不動産の共有者の一部が、他の共有者の同意を得ることなく、単独で無効な所有権移転登記の全部の抹消を請求することができるか。妨害排除請求としての登記抹消請求の性質と共有持分権の関係が問題となる。
規範
不動産共有者の一人は、保存行為(民法252条ただし書)として、または自己の有する共有持分権に基づく妨害排除請求権の行使として、当該不動産について実体上の権利を有しない名義人に対し、無効な登記の全部の抹消を請求することができる。登記は不可分なものであり、自己の持分を超えて登記全体の抹消を求めることが共有物の保存・管理として適当であるためである。
重要事実
被上告人らは本件山林の共有者の一部であり、本件山林にはD名義の所有権移転登記がなされていた。上告人はDの相続人であったが、D(および上告人)が本件山林を買い受けた事実は認められなかった。そこで、被上告人らが、共有持分権に基づき、実体上の権利を有しない上告人(Dの相続人)に対し、登記全部の抹消を求めて提訴した。
事件番号: 昭和35(オ)1197 / 裁判年月日: 昭和38年2月22日 / 結論: 棄却
一 甲乙両名が共同相続した不動産につき乙が勝手に単独所有権取得の登記をし、さらに第三取得者丙が乙から移転登記をうけた場合、甲は丙に対し自己の持分を登記なくして対抗できる。 二 右の場合、甲が乙丙に対し請求できるのは、甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続であつて、各登記の全部抹消を求めることは許されない。 三 …
あてはめ
本件において、被上告人らは本件山林の共有持分権を有しており、対する上告人側には適法な権利(買受の事実)が認められない。したがって、上告人名義の登記は実体関係を欠く無効な登記である。共有者の一人が自己の持分権を保全するためには、不動産全体の公示を正す必要があり、登記の抹消は性質上不可分であるため、被上告人らは持分割合に限定されることなく、登記全部の抹消を求めることができる。
結論
不動産共有者の一人は、その持分権に基づき、無効な登記名義人に対し登記全部の抹消を請求しうる。したがって、被上告人らの請求を認めた原審の判断は正当である。
実務上の射程
共有物の返還請求や妨害排除請求(登記抹消請求)に関するリーディングケースである。答案上は、保存行為(民法252条ただし書)の具体例として、あるいは各共有者の持分権の効力が目的物の全部に及ぶ帰結として、単独で請求可能である旨を述べる際に活用する。なお、不法占拠者に対する明渡請求(全部返還請求)の論理と同様の構成をとる。
事件番号: 昭和34(オ)44 / 裁判年月日: 昭和38年3月12日 / 結論: 棄却
所有権移転登記の共有名義人を被告として当該登記の抹消登記手続を求める訴訟は、固有必要的共同訴竈訟と解すべきである。
事件番号: 昭和34(オ)960 / 裁判年月日: 昭和35年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の共有者は、保存行為として、共有不動産について無断でなされた不実の登記の抹消を単独で請求することができる。 第1 事案の概要:上告人らは、本件家屋が亡父Dの新築所有にかかり、その死亡により共同相続人である上告人ら両名の共有に属するものであると主張した。これに対し、被上告人B1は無断で自己名義…
事件番号: 昭和41(オ)1097 / 裁判年月日: 昭和42年6月6日 / 結論: 棄却
不動産の所有権が順次甲、乙、丙と譲渡された場合に、甲が乙に対し所有権移転登記をする意思で、登記申請書類を交付していたときは、甲の右登記申請意思は、丙が右書類を利用して甲から丙に直接所有権移転登記をすることを無効たらしめるものではない。
事件番号: 昭和56(オ)817 / 裁判年月日: 昭和59年4月24日 / 結論: その他
共有者の一部の者の名義に所有権移転登記又は所有権移転請求権仮登記がされている場合に、他の共有者が妨害排除として右一部の者に対して請求することができる登記手続は、自己の持分についての一部抹消(更正)登記手続に限られる。